※夢です
※名前変換はなし



「…お前さ、もしもオレが…お前のこと好きだ、つったらどうするよ」
「…へ?冗談、…ですよね?」


バスケ部の練習後、ボールのカゴを片付けるのに体育館の用具室へと向かう途中のことだ。突然先輩からかけられた言葉に、喜びよりも猜疑心が勝ってしまい、私は思わずそう聞き返していた。

人の告白を冗談で片付けるなんて失礼?だって福井先輩だよ?これを言ったのが岡村先輩ならきっと本当だろうけど、劉くんに平気でウソ吹き込んだり、何かにつけて毒のあるツッコミ入れたり、陽泉バスケ部のマネージャーとして日々一生懸命仕事する私にも割と毒舌発揮したりすぐからかったり意地悪してきたりする福井先輩だよ?そんな人からの急な告白なんて、一体どうして信じられるだろう。


「…ま、そうだな。冗談だよ。だから今オレが言ったことは忘れちまえ」


そう言って前へと向き直り、再び歩き出す福井先輩。──けれど。私から顔を背ける前、一瞬だけ見えた先輩の表情は、とても切なそうで、そしてほんの少しだけ悲しそうでもあった。どうして、なんて、そんな疑問はもう浮かばなくて。

少し前を歩く先輩のくすんだ金髪が、辺りいっぱいに射し込む真っ赤な夕陽をきらきらと反射する様子をとても綺麗だと思いながら、私はカゴを押す腕にさっきよりも力を込めた。少し早足で歩いて先輩の横に並ぶと、隣のちょっと目つきの悪い顔を見上げる。次ににこりと唇に笑みを形づくってから、息を吸った。


「…忘れませんよー、先輩のさっきの言葉。…だって私も、先輩のこと好きですもん」
「… 、は…?」


間抜けな声とともに私の方を振り返る福井先輩。わあ、こんな先輩の顔初めて見た。嘘だろとでも言いたそうな、驚いたような表情。こういうのを、鳩が豆鉄砲を食らったようなとか言うんだっけ。試合の時の真剣な顔でも、岡村先輩をからかう時の顔でもない、福井先輩の表情。なんだか可愛く見えて思わず笑ってしまった。


「…ふふっ、先輩、ビックリしすぎですよ…」
「…うるせぇ、先輩からかってんじゃねえぞ」
「先輩かーわいー」


私が笑ったことで恥ずかしくなったのか、少し顔を赤くして眉根を寄せる先輩にもう一声かけたところで、急に先輩の顔が近付いてきて。途端に唇に触れる柔らかなものと、耳元に感じる熱く湿った吐息。それはほんの一瞬のことだった。
気付いたらもう先輩の顔は離れていて、ついでにちょっと意地悪そうな、いたずらに成功したみたいな表情をしてて。


「先輩をからかった分の仕置きな」


にや、と笑う先輩に、今度は私が顔を真っ赤にする番だった。




勢い余って福井さんの夢ができてしまいました!




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