※すでに両思いでほんのり付き合ってる感じの南天
※南沢先輩出てくるまで書けてません
最近南沢先輩を見かけない。学年も違うし会う機会なんてあまりなくて当たり前なのだが、最近本当に姿を見ることすら稀だからついそのことに気を取られて、この間の練習中なんか鼻にボールが命中して火花が散ったりもした。
先輩はきっと俺のことをあんまり気にかけてないんだ。
俺は大好きなサッカーの練習にさえ身が入らないくらい気づけば先輩のことばかり考えているのに。なんだかその温度差にすこし寂しさを感じて思わず鼻の奥がつんと痛くなる。唇をむすんで、目のふちからこぼれそうになった雫をぎゅっと押しとどめた。前向きに考えて気分を変えないと情けないことにこのままじゃ泣いてしまいそうだ。急いで目元をぐしぐしと拭って悲しい気持ちを追いやるけれど、それでも唇をまたいでこぼれるため息の回数はあまり減らない。
授業中だって、黒板に羅列している文字や記号をただノートに書き写すのが精いっぱいで、こちらにかけられる教師の声なんて頭の上を滑っていくばかりだ。時々意識を引き戻すためにシャーペンを握り直して窓の外を見ると、痛いくらいの青が目を焼いた。また目尻にじわりと水分が滲む。そうしていたら授業を区切る合図が鳴り響いて、同時に昼食の時間が訪れたことを知らせた。信助が俺の机の前にお弁当箱を持ってやってくる。
「天馬、ごはん食べよう!」
「ん…」
見た目からはあまりわからないけど信助はとても聡いから、どうやらこの生返事で俺の様子がいつもと違うことに気づいたようだった。
「大丈夫?天馬…」
「あ…!ごめんごめん、大丈夫!」
「…南沢先輩のこと?」
「っえ」
「会いたいって顔に出てるよ」
「…うん…」
わりと自分がわかりやすい人間だとは薄々感じていたけど、こんなすぐに見抜かれるほどだったとは。駆け引きや心理戦には向いてないな。
「会いたいならさ、会いに行けばいいんじゃないかな?」
信助がにこりと人好きのしそうな笑顔で言う。信助はいつも俺が一歩を踏みだすためのきっかけをさりげなくくれる。