※ファットガムさんに心臓を貫かれたので急に環ファかきてえ!と思い立ったものの見切り発車すぎて先が思いつきませんでした




気付いたら、オレの目はあなたばかり追っていたんです。いつから、なんて覚えていないほど、自然に、当たり前に。

***


「──よっしゃ、これで終いやな。ほんならあとは向こうに任してオレらは引き上げんで」
「はい」

最近事務所周辺で多発していたひったくりや窃盗の主犯である敵をようやく捕まえ、その身柄を警察に引き渡す。犯行の痕跡はあったものの犯人を特定する証拠がなかなか出ず、捜査協力を依頼されたファットガム事務所でも手を焼いていた事件がやっと解決し、所長でありプロヒーローのファットガムと、ここへインターンシップに来ているオレ、天喰環は安堵のため息をついた。

「はぁ、やっと捕まりましたね…」
「かなり厄介な"個性"やったからなぁ…せやけど環、今回はホンマお手柄やったで。無事捕まったんはお前のおかげや」

にっと歯を見せて明るく笑いかけられ、思わず心臓が大きく跳ねた。今のファットは連日の捜査協力と今日の活動で蓄えていた脂肪を使い切ってしまい、普段の丸みを帯びた体型ではなくスリムな姿になっている。いつもの姿なら見慣れているし、マスコットの雰囲気も強いので(それもまた好きなのだが)あまり意識しすぎずに済むが、目にする機会の少ないこの姿は心臓に悪い。夜遅くの街明かりに時おり反射する跳ねた柔らかそうな髪や、人好きのしそうな豊かな表情。何もかもが眩しくてとても直視できない。ミリオも太陽のようだけど、この人も太陽だ。頷きながらフードを被り直す振りをしつつ俯く。

「いえ…あの時オレの決断がもう少し早ければもっと…」
「もう犯人捕まっとんねんからうじうじせんでええ!お前はようやってんからもっと自信持ち!」
「…はい、」

勢いよく背中を掌で叩かれ少し噎せつつも、また陥りそうになったネガティブ思考のループを強引に切ってくれたことに有り難さを感じる。ノリやストレートすぎる言葉は時々キツイが、やはりこの人はいい人なのだと思い直した。


事務所へ戻るべく、大通りに比べ人や灯りの少ない細い歩道を並んで歩きながら、取り留めのない話をしていたその時だった。

「…ッウオラアァァァ!!」

突然前方の暗がりから刃物を持った人物が飛び出してきて、ファットの方へ襲いかかる。それに対しファットが咄嗟に構えを取った。眼前で繰り広げられる光景がスローモーションに見えた瞬間、オレはアサリの殻を再現しそいつの手から刃物を弾き飛ばして、タコの腕で顎を打ち抜いていた。
恐らくは先程逮捕した敵の残党だろう。捕まらずに上手く逃げ回っていたのか、リーダー格の男に逃がされていたか。顎への打撃で倒れ込んだ相手は完全にのびており、暫く起きることはなさそうだった。



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