※時間軸はう/えき無印の単行本16巻直後あたりを想定しています
※始めたかったのに全然始まってない植ロベ…



自室の机に置いている携帯電話が震える音がして、誰かからの連絡が届いたことを僕に伝えてくる。二つ折りのそれを開いて画面に映し出される文字列を確認すると、登録していないアドレスからのメールだった。迷惑メールの類だろうかと思い件名へ視線を移せば、そこにあったのはかつて次世代の神を選ぶ戦いで命懸けで僕へ挑み、その後再戦を誓い合った植木耕助という人物の名だった。
──何故植木くんが僕の連絡先を?と軽く信じられない気持ちで彼からのメールを開いてみると、仲間の鈴子からつてを辿り僕の連絡先を知ったこと、自身の近況、そして僕は今どうしているのか気になる、といった内容が綴られていて、言葉少なだけれど何故か優しさを感じる彼らしい文面に思わず目元が緩んだ。
メールを読みながらあの時の目まぐるしい戦いの記憶が蘇ると同時に、彼に出会ったことで変えられた自分の存在意義と、ほのかにあたたかく灯った気持ちを思い出す。心の奥に仕舞って忘れていたつもりだったけれど、どうやらそう簡単になかったことに出来る気持ちではなかったらしい。
僕は届いたそれをもう一度ゆっくり読み直してから保護すると、植木くんに久しぶりに会うための約束を取り付けるべく返信の内容を考え始めた。


***

鈴子に頼んで、元十団の奴らからロベルトの連絡先を聞き出したオレは、何故か今までにないぐらい緊張していた。普段メールをあまりしないせいで、何を書けばいいのかさっぱり分からなかったからだ。困ったオレはそういうのが得意な森に相談して、怒られつつ添削してもらい何とかそれなりのものになったメールを、かつて戦った最大のライバルに向けて送った。アイツは今、元気にしてるんだろうか。オレからのメールにどんな返事くれるんだろ。らしくなくそわそわとしながら手の中の携帯を握りしめる。
しばらくすると短い振動が手に伝わり、オレはすぐに携帯を開く。明るい画面にはロベルトの名前。届いたメールを読み終わるが早いか、オレはすぐにロベルトに電話をかけた。

「──もしもし、植木耕助、だけど。」
「…植木、くん?」

数回のコール音を経て繋がった相手側へこちらから名乗り、それに応えるように鼓膜へ届いた懐かしい声は少し戸惑いが滲んでいて、確かめるようにオレの名前を繰り返した。

「うん、オレ。植木。久しぶり、ロベルト。元気してたか?」
「植木くん…久しぶりだね。うん、僕は元気にしてたよ。キミは?」

メールで何を言えばいいか分からなかったのが嘘のように、言葉が勝手に口をついて出てくる。ああ、オレきっとロベルトとすげえ話したかったのかもしれない。

「そっか。もちろん元気。森とか佐野とか、他のヤツも。」
「…ふふ、ならよかった。」
「なんかロベルトとスゲエ話したくなってつい電話しちゃったけど、急にごめん。」
「気にしてないよ、キミは考えるより先に体が動くんだから、そんなの今さらだろ?」




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