※俺司くんと黛さん



「黛さん、今夜はどうします?」
「あー…悪い、一緒にいたいのは山々だけど、今追ってる深夜アニメが佳境だから一人で見てぇんだよな。だからまた今度で」
「え」

久しぶりの休暇、久しぶりの再会、そして久しぶりのふれあい。長い間なかなか会えずに離れていた恋人と、やっと休みの予定が重なり会えたのだ。昼間は買い物に出かけゆっくり過ごし、夜は黛さんの作った夕餉を口に運んでその美味しさに舌鼓を打ち、月も傾く深夜はきっと久しぶりに互いの体温を感じながら朝まで触れ合うのだろうと、らしくなく胸を躍らせていたのに。俺の期待は先ほどの彼の言葉で無残にも砕かれ、おまけにそのかけらに胸を突き刺されたのだった。

そもそも久しぶりに会えた恋人<今追ってる深夜アニメという図式はどういうことなんだ。恋人であることに託(かこつ)けて調子に乗るようなことはないつもりだが、さすがの俺もこの言葉には衝撃を受けた。
何よりも俺を優先しろとは思わないが、せめてアニメよりもは恋人と過ごす時間を大事にしてほしかった。

「録画して見ればいいんじゃ…」
「いや、やっぱリアルタイムで見ねぇと、ネタバレ見るの嫌だし。一時半からだから見る」

俺なりに最大限譲歩した意見さえもあっさりと突っぱねられ、胸の奥がびしびしとひび割れていく音がした。彼と過ごした昼間の暖かさは今のやりとりで全て凍りついてしまい、それは俺の中の堪忍袋の緒が完全に引きちぎられたことを意味していた。

「…そうですか…」

我ながら堪え性がないなと自嘲してしまうほど、今つぶやいた言葉には底から湧き上がるような怒気が滲み出ていた。
決して広くはない彼が居を構えるアパートのリビングに、しんと静寂が広がる。俺が、正しくは『僕』が彼に鍛えさせた人間観察力のためか、いや、わざわざ見なくとも雰囲気で感じ取れてしまったのだろう。
俺はバスケを辞めてからまた細くなった彼の腕を掴むとアパートの薄い壁へその背を追い詰めた。下から見上げると、眉を顰める彼の顔が俺の視界を覆う。怒らせたことを苦々しく思っているのか、腕を強く握り込まれ痛みに顔をしかめているのか、或いはそのどちらもか。

「…赤司、悪か」
「今更謝っても、もう遅いですよ」

謝られてももう許す気はなかった。だってもう黛さんは俺との時間よりアニメを選ぶと言ってしまったからだ。俺は彼の謝罪を遮り、脚の間にこちらの膝を割り込ませて動きを封じると唇を噛み付くように奪った。

「あか、っ…!んん…!」

頑なに開けようとしない唇を舌先でこじ開け隙間から差し込み、いつも攻めてやる場所をつとめて優しく舐ると、強ばっていた彼の全身の筋肉がわずかに緩んだのが分かった。
そこから口付けはやめないまま彼の股間を膝で強弱をつけながら苛めてやると、小さく肩を跳ねさせながらもその刺激を懸命に堪えている様子が見て取れ、俺は心中でうっそりとほくそ笑んだ。胸の中を占めていく暗い加虐心に手を引かれ、さんざん荒らした口内から退くときっちり閉じられたシャツの襟に覆われていない部分へと些か乱暴に歯を立てる。途端に微かな呻き声とともに彼の肩が再び跳ねたのが分かった。鬱血痕なんて生易しいものじゃ足りるものか。この人のすべては俺のものだ。そう刻み付けるように歯形を付け、そこへ舌を這わせる。くっきりと白い肌に新しく付けられた痕を見て、己の中にある征服欲がいくらか満たされたのを感じた。

「っ …やめ、赤司…」

俺の名を呼び、今から行われようとすることをやめるよう乞う黛さんの声には、最初あった拒絶の意思より羞恥の方が色濃く感じられた。息は荒く熱がこもり、俺の膝から与えられる刺激にただ耐えているといった具合だ。

「…俺はやめてもいいですけど、あなたは辛いんじゃないですか?」
「は…辛く、ねぇよ… っぅあ…!」

ぐり、とわずかに勃起し始めた彼の下半身の熱を更に煽るように強く膝を押し付けながら意地悪な質問を投げつければ、強がりも虚しく上擦った声が漏れ、今度こそ俺は唇を吊り上げて笑みを形作った。彼のズボンを押し上げるそこへ目を遣ると、既にズボンよりも濃い色の染みが出来ていて、それが先走りのせいであることは一目瞭然だった。
俺は一度膝を離すと壁に縫い止めていた腕を強く引き、今度は彼をベッドへ押し倒す。腕は離さないまま体へ跨り完全に覆い被さると、もう一度股間を膝で攻めた。

「い、っ…んぁ、っ…!」
「気持ちいい、ですか?」

声が漏れないよう歯を食いしばりながらも、快楽には抗えないのか腰をわずかに揺らめかせ、甘さを孕んだ声を溢し眉を顰める彼に問いかけると首を勢いよく横に振られてしまった。相変わらずやはり素直じゃないなと軽く息をつき、膝をどけて体をずらし彼の焦げ茶色の細身のズボンに通されたベルトを外してから下着ごと引き下ろした。

「な、っ 赤司…!」

普段あまり表情が乗らない澄ました顔をしていることの多い黛さんが、目を見開き明らかに焦りを含んだ声で俺の行動を慌てて静止しようと腕を伸ばしてくるのがとてもかわいらしかった。俺の前でだけは色んな表情をしてくれる彼が愛おしい。俺は柔らかく微笑むと外気に晒され緩く勃ち上がる彼の雄の象徴をなんのためらいもなく口の中へと招いた。

「ぁ、んっ…!あか、やめろ …っ…きたな…!」

彼が俺の性器を口で奉仕してくれることはあったものの、彼のそれを俺が口に咥えることは彼の羞恥心が許さなかったらしく、俺は敢えてそれを今まで不問にしてきたが今回はそんなことを許す余裕なんてない。
黛さんが必死に俺の頭を押しやろうとしてくるのを無視して、竿全体を舐め上げ先走りを啜り、裏筋を擽るように舌先でなぞってから鈴口を穿ると彼の腰がびくびくと大きく震えた。

「―ぅぁ、っぁああ… ッ!」

それに気を良くして袋を揉みしだいてやりながら喉の奥に亀頭を擦り付けとどめとばかりに強く吸い上げれば、一際大きく彼の体が跳ね、硬度を増したそれの尿道口から勢いよく粘液が出された。俺は粘つくそれを受け止め、ゆっくりと全て喉に通し終えるとようやく彼の性器を口から出した。

「ん…やはり溜まってましたか?濃いですね」
「っ…死ね…」

鼻に抜ける青臭さは彼の味だと思えばちっとも不快にならなかった。黛さんは俺の口で絶頂を迎えさせられたことが羞恥の限界だったのか、眉を下げ耳まで朱に染め上げ震えながら俯いていた。それでもまだ暴言を吐く余裕はあるらしい。なら手加減は無用だな。

「それだけ元気なら大丈夫そうですね、安心しました」
「は、」

怒りはもうとうに鎮火していたが、ようやく首を擡げてきた俺の欲を鎮めてもらうまで彼にはしっかりと付き合ってもらわねば、と思いながら俺はもう一度彼に微笑みを向けた。
そして脱がしかけていた彼のズボンを足から抜き取り、下半身を完全に露出させる。いくら一度イかせたとはいっても本気で暴れられると押さえ込むのに苦労するので、俺は首にあるネクタイをほどき手早く彼の両腕を頭上に纏め上げ固く結んだ。

「おい!」
「勿論これからですよ、本番は」
「ん…っ!」

黛さんの上にふたたび覆い被さり、耳に息を吹きかけるよう囁いてやるとぴくりと身動いだ。
俺はもう少し彼の羞恥を煽れないものかと逡巡し、周りを見回すとテレビのリモコンが視界を掠め、ふと先程彼が俺を差し置いて優先しようとしたアニメの存在を思い出した。そういえば一時半からだったなと壁にかけられた時計に視線を走らせると、短針が一と二の間にあり長針は七の位置を過ぎたところだった。まさに絶好の機だと俺はベッド上の棚に置かれたリモコンへ手を伸ばし主電源を入れる。するとかわいらしい声で話す少女がテレビ画面に映し出され、黛さんが勢いよくそちらを振り仰いだ。…随分と敏感じゃないか。だがそんなものを見せる余裕など与えるものか。
俺は持参した催淫効果を持つローションの小瓶を手に取り蓋を開けて出した中身を掌で温めると未だテレビ画面の方を見ている黛さんの脚を抱え上げ、尻たぶを拡げて後孔へ丁寧に塗り付けた。正直半信半疑だったので本当に効果があるのか確かめたかったこともあり、後ろだけでなく萎えていた性器にもそれを塗った。

「ひ、や、何す、…っ!?」
「…どうですか?」

間もなく効果が現れてきたのか、触れてもいない彼の性器がみるみるうちに勃ち上がり、透明なとろみのある体液を垂らし始める。即効性という謳い文句もどうやら嘘ではなかったらしい。鼓膜に届く彼の息遣いはまた荒くなり、もぞもぞと落ち着きなく腰を揺らす様子を見て俺は唇に弧を描いた。

「…っ テレビ、…消せ…!」
「何故です?見たかったんでしょう?」

目元を赤く染め上げ、既に熱っぽく潤んだ瞳でこちらを懸命に睨み付けながら黛さんが紡ぐ言葉をわざととぼけて交わせば、俺の予想通り理由なんて言えないとばかりに唇を噛みしめ言葉に詰まる彼。ああ、なんとかわいらしいのだろう。思わずくすくすと笑ってしまえば、彼の足が俺の背に飛んできた。…地味に痛い。やってくれるじゃないか。俺は仕返しとばかりに彼の欲を握り込み上下に扱いて刺激を与えた。

「あっ… く、やめ…っ!」
「さっきまでの威勢はどこにいったんですか?」

先走りの量が増え、いやらしい水音が手元から響く。
握るそれがだんだん硬度を増し、鈴口が更なる刺激を求めるように震えている。それに応えるべく緩く爪を立てて尿道口をいじめてやると面白いように目の前の細い体躯がびくんと肩を跳ねさせた。

「ひ、んぁ゛あッ!」

ローションのせいなのだろう、普段よりも快楽に対しての感覚が鋭敏になっているらしく、彼の白い喉から漏れ出る声は強過ぎる刺激に耐えられないゆえか甘さよりも悲鳴じみたものになっていて、俺はそれにまた新鮮味を覚える。ぞくぞくと背を駆け上がるのは、性欲と加虐心が絡み合った暗い好奇心。眉根を寄せこちらを見ないようにしながら必死に声が出ないように堪えるその顔を、俺が与える快楽でもっとどろどろに蕩かせてやりたい。唇からこぼれる皮肉を、甘く艶のある声に変えてやりたい。次々と心に浮かぶ果てしない欲望に、頭の隅にあった理性はあっという間に引きずり込まれていく。

「ぁ… はっ…」
「…千尋さん、」
「んん、…ふ っ」

短く息を切らしながらシャツの胸を上下させる黛さんの唇に自分のそれを重ね合わせる。ケアされていないそれはほんの少しかさついていたが、既に熱く熟れていて、角度を変えて啄むたびどちらともつかない唾液で濡れ、青白い部屋の蛍光灯に照らされていやらしく光った。彼の唇を味わいながら手を再び下半身へ伸ばし、今度は尻たぶの奥の窄まりに触れる。すると途端に彼は腰を揺らし予想していなかったそれに驚いたようにひくりと喉を震わせた。だがもう諦めたのか、俺の手からも唇からも、彼は逃れようとしなかった。
それをいいことに俺は口付けを深くしながら、先ほど触れた蕾に中指の先を少しずつ埋めていく。蕾は媚薬ローションの効果か、ひく、ひくと収縮を繰り返しながらもこちらの指を受け入れていった。

「ん、…!っん 、は…ぁ あぁ…っ!」
「…は、…かわいいですよ、千尋さん」

飲み込まれていく喘ぎを聞きたくて唇を解放すれば、我慢できないというように甘い声を上げ始める黛さんに、こちらの腰もずくりとまた重くなる。頭上を滑っていたアニメの音の中に断続的に混ざる荒い息遣いと彼の情欲に濡れた声が、無機質な部屋を満たしていく。
時折確かめるように埋めた指を曲げ伸ばししたり、円を描くように動かしてやると、黛さんの腰が大げさに跳ねた。






赤司が持参した催淫効果のあるローションを塗られて好きなアニメがかかる中で羞恥心高められながら赤司にめちゃくちゃ抱かれる黛さん
その後アニメ見ると抱かれたこと思い出すからそのアニメを二度と見れなくなる黛さん
というお話にしたかったんです




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