※夢です
※名前変換はなし




影が薄い、となかなか気付かれにくい彼を、必死に目で追いかけるようになってから早数ヶ月。いまだ片思い記録は進行中だ。

誠凛高校に入学して間もないある日、休み時間にぼんやりと階段を降りていたわたしはうっかり足を踏み外した。けれど、落ちてダメージを受けると思われたわたしの体は落ちず、代わりに腕が掴まれた感覚。振り向くと、どうやら階段を上っていたらしい彼…黒子テツヤくんが、わたしの腕をしっかりと捕まえてくれていたのだった。

「…大丈夫、ですか」
「っ… あ、ありがとう、ございます…」
「この階段、けっこう急なので気をつけた方がいいですよ」
「…はい」

左手で階段の手すりを掴み、右手でわたしの腕を掴んでくれた彼の足元に視線をやると、おそらくわたしの腕を捕まえるときに放り出したのだと思われる文庫本が、開いたままの形で落ちていた。

自分の大切な本よりもわたしを助けることを選んでくれた彼の優しさ、それなりに背もあり決して軽い方ではないはずのわたしをものともせず引っ張り上げた彼の「男の子」の部分に、わたしはあっという間に惹かれてしまったのである。

それからというもの、わたしは黒子くんを探すのが毎日の楽しみになった。
うれしいことに、クラスは同じ。でも気付くと彼はいなくなっていることが多いし、言いたいことをハキハキと言えるタイプではないわたしは、なかなか黒子くんに話しかけることが出来なかった。
でも日々の観察の甲斐あってか、彼は読書が好きでいつも何かを読んでいること、部活はバスケ部に入ったこと、そして同じ部のクラスメートである火神くんと割と仲がいいことなんかがわかった。

ふたつ分の席を挟んで向こう側に座っている黒子くんが、火神くんとまた楽しそうにわいわい話しているのを眺めて、胸がふんわりと暖かくなる。全く正反対そうな二人は一体何を話すのかな。けれどそれを直接聞きにいく勇気なんかないから、黒子くんの楽しそうな表情を見て満足するまでにとどまる。




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