※夢です
※名前変換はなし
※夢主はリコちゃんと幼なじみ設定
※森山先輩が出てくるところまで書けませんでした…





「…服が、ない…」

普段着ている服以外に何かないものかとタンスの中を漁ってみたものの、女の子らしい服を今まで好んで着ることがなかった自分の持ち合わせには「かわいい」と言われそうなデザインの服は残念ながら見当たらなかった。
ふう、とかるくため息をついてから出した服をしまう。ああ、どうしよう。こんな風に悩む日がくるなんて想像さえもしていなかった。
森山先輩にデートに誘われたのが三日前、そしてその日はあさってに迫っているというのに。

これは誰かに助けを求めたい。ただ、友だちである黄瀬くんはモデルだからセンスはいいだろうけど、やっぱり異性だし相談しにくい。
ぐだぐだと考えていたらふと、幼なじみのリコちゃんの存在を思い出した。彼女は学校が違うからあまり会えないのが難点だけど、今はそんなことに構っていられない。わたしは彼女に相談するためすがる思いでアドレス帳を開いた。


***


「久しぶり〜!元気?」
「リコちゃん久しぶり!うん、元気だよ!」

うれしそうにこちらへ駆けてきたリコちゃんのはきはきとした声が耳に届く。久しぶりに見る彼女の明るさを改めて羨ましく感じた。

わたしは神奈川で彼女は東京だから、いつもよりも遠出になる。
今日はまず駅の改札口で待ち合わせして、服を買って、お茶でもしようという予定だ。
わたしはシンプルなVネックのニットにスキニーとスニーカー。リコちゃんは丸襟のシャツにネイビーのセーターとショートパンツ、黒のタイツにショートブーツというかわいらしい出で立ちだった。

「んじゃ行こっか!」
「うん、今日はお願いします」
「まっかせて!」

手を引かれて駅を出る。昔からリコちゃんはわたしの本当のお姉ちゃんみたいで、今もそれは変わらない。

「デートに着ていく服、だもんね。かわいいの選ぶわよー!」
「な、なんか緊張する…!」

はりきるリコちゃんの手には今月号のファッション雑誌があった。かわいらしい服をばっちり着こなしてポーズを決めたモデルさんの写真にちらりと目をやる。

「こういうかわいい服って今まで一枚も持ってなくて、着たことないから、似合うかなあ…」
「大丈夫、あんたは元がいいんだから絶対似合うわよ」

先ほどからリコちゃんと一緒に雑誌を見ながら色んな服屋の前を通っているけど、なかなか良さそうなお店が見つからない。かわいい服は素敵だけど、自分に似合わなさそうだとか照れくさいとか思うと、これにしようという決断がなかなかできなかった。

「あ、いっそ森山さんにどんなタイプの服が好きか聞いたら?」
「えっ!無理だよそんなの!恥ずかしすぎるから!」
「そうかしら?本人に聞くのが一番確実だし手っ取り早いと思うんだけど…」
「わたしの心の問題!」

まったく彼女はとんでもないことを言う。それは確実な方法かもしれないけど一番できない。


「じゃあ次のお店見てみよっか」

おしゃれな洋服のショップになんて普段行かないから緊張する。けれどそれを楽しみにする自分もいて、数日前から落ち着かなかった。今だって、胸がドキドキして転ばないかと心配なくらいだ。

今日は土曜日だけどうちのバスケ部は休日も練習がある。本当はマネージャーのわたしも参加なんだけれど、この用事のために休むことになった。他のマネージャーさんの仕事が増えてしまうのは申し訳なかったけど、他の日に頑張るから許してほしい。
早足なリコちゃんの後ろをついて行くと、かわいらしい外観のお店の前についた。

「ここ、かわいい服がいっぱいでおすすめなとこよ!」

初めて訪れる店にドキドキしながら棚やフック、店中に所狭しと並べられた服を眺める。
ふと視線を移した先に、かわいい形の襟がついたワンピースらしきものがあった。手に取って広げてみると、濃いオレンジ色が落ち着いた雰囲気に見えるけれど、ゆったりした形やふくらんだ袖口がかわいらしい。見つめながら難しい顔をしていたら、かわいらしい店員さんが笑顔でこちらへ来た。よく見るとわたしが見ているこの服の色違いを着ていて、とても似合っていた。

「こちらが気になるんですか?」
「あ、っはい…」
「かわいいですよね、今年の流行りの色なんですよ」
「へえ…」
「試着されますか?」
「え、あ…と」

にこにこと感じよく話しかけてくれる店員さんにどぎまぎしてしまって上手く受け答えが出来ないでいたら後ろから声がした。

「はい!しまーす!」
「えっ、ちょっ」

リコちゃんが両手に服を持ち店員さんに返事をする。いつの間にこんなたくさん選んできたのだろう。 戸惑うわたしにかまわずぐいぐい試着室へと向かい、彼女が選んだらしい白のレースがついたキャミソールと、カーキのショートパンツ、わたしが眺めていた濃いオレンジ色のトップスを手渡すと試着室の中にわたしを押し込んだ。

「着替え終わったら呼んで、待ってるから」

そう言われてとりあえずわたしは手に持った服に着替えることにする。
こんなふんわりとしたかわいい服は初めて着るタイプのものだ。いつもは動きやすいGパンやTシャツ、パーカーばかりを好んで着る自分にとって、こういう自分をかわいらしく見せるための服は、慣れないけどなんだか特別で素敵なものに見えた。

着替え終わってから、鏡の中の自分を見てみる。オレンジのトップスの襟ぐりが広いせいか、キャミソールのレースの紐部分がすこしだけ見える。でもそれがより華奢な雰囲気を作っていて、とてもかわいらしい。
ふんわりした上との対比で、カーキのショートパンツを履いた下半身はすっきりと見える。かわいいデザインとシンプルなデザインで組み合わせてあるから、フリフリすぎないちょうどいいバランスになっていて、とても着やすかった。
くるりと全身を見回して、リコちゃんのコーディネートは上手だなあと思った。

「リコちゃん、終わったよ〜…」
「終わったの?…うん!似合ってるじゃない!」
「ほんと?ありがとう…!」
「だから言ったでしょ、あんたはこういう服きっと似合うって」

得意げに胸を張るリコちゃん。自分がこんなかわいい服が似合うなんて思わなかったから、リコちゃんがいなかったらきっとそんなことは気付けなかっただろう。本当にありがとう、リコちゃん。

試着した服から自分の服に着替えて、店員さんに服を渡す。

「ご試着お疲れ様でした」
「じゃあ…この服一式、買います」
「かしこまりました、ありがとうございます。ではこちら…三点お買い上げでよろしいでしょうか?」
「はい」

いい買い物ができてよかった。明日、先輩にかわいいって言ってもらえたらいいなあ。
お茶しに入ったカフェで、リコちゃんは紅茶とケーキのセット、わたしは紅茶とパフェを楽しみながら、次はどうしようかと相談する。

「服は買ったし、次は…化粧品かな?メイクするでしょ?」
「え、わたしお化粧品って持ってない…」
「そうなの!?困ったわね…」

リコちゃんが、さすがに一から全部揃えるとなると高い…でも肌につけるものだから、中途半端なのはダメだし…と考えこむ。
ああ、こんなところでまさかの問題…!どうしよう。

「そうだ!下地とかファンデーションは、お母さんから借りれるか聞いてみたらどう?」



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