※夢です
※名前変換はなし


放課後の教室。クラスメートたちは部活動や帰宅などでみんな出払ったため、今ここにいるのはわたしだけ。前よりも日没の早くなった最近は、わざと灯りを点けず、教室中いっぱいに窓から差し込む夕陽が沈みきるまでをゆっくり眺めてから帰るのがひとつの楽しみになっていた。
夕陽とは何故こうも人の心を動かすのだろう。窓際の席に腰かけながら、大好きなアーティストの、とあるアルバムの最後の曲のあとに入ってる隠しトラックを、ふと思い出して口ずさむ。この曲のすこし寂しげなアコースティックギターのメロディが、今の風景と気分にぴったりだ。普段の彼女のかわいらしい歌もいいけれど、こういうしっとりしたメロディラインの歌もとてもいい。
彼女のすこしハスキーで柔らかな声を思い出し、自分なりに真似しながら。優しい歌詞を最後まで歌い切った直後だった。
ぱちぱちと一人ぶんの拍手が鼓膜を揺らして、わたしは弾かれたように振り返った。しまった、聞かれてたのか。

「歌、上手いな!忘れ物取りにきたんだけど聞き入っちゃったよ〜」

ニコニコしながらわたしの方へ近付いてきたのは、クラスのムードメーカー、小金井くん。ついでに言うとわたしの隣人で、好きな人。
誰かに歌を褒められたなんて初めてなうえに、それが好きな人にだなんて。うれしい気持ちはあるものの、聞かれたのが恥ずかしくてつい口ごもってしまう。

「あ、ありがと…」
「それって誰の曲?」
「えと、ENT…」
「ENT好きなんだ?」

まともな返事さえ出来ないわたしに気を悪くすることもなく、明るい調子で話しかけてくれる小金井くんはほんとうにいい人だと思う。気付けば彼はわたしの隣に座って、椅子をわたしの側へ向けていた。彼と膝がふれあいそうなくらい距離が近くて、緊張からわたしは膝の上で両手を握りしめた。
心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほどに大きい。





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