○月×日。天気は雨だ。使い古して所どころ傷んでいる傘を差しながら学校へ行く途中、いつも通る並木道の一番大きな木の根元に、段ボールに入った子猫が一匹捨てられているのを見つけた。朝から降り始めた雨に濡れて寒いのか、寝そべったまま震えていた。
本当はすごく、抱え上げてあっためてやりたかったしミルクもあげたかったが、今うちの部室にはテツヤ2号がいるから、二匹も動物を飼うのはきっと無理だ。それにもし二匹の相性が悪かったら、お互いストレスを与えてしまうことになりかねないだろう。
こういうとき、自分の無力さに悲しさと悔しさが募る。子猫に傘を傾けてやりながら、俺はしばらく動けずにいた。

***

今日はいつもの時間になってもコガが教室に現れないので、そわそわと落ち着かなかった。日向や伊月はあいつのことだから寝坊だろう、とさして気にしていなかったが、心配性な自分はつい悪い方へと考えてしまいがちだった。休むなら必ずメールをくれるし、遅刻でも、ごめん水戸部、先生に遅れるって伝えといて!と焦り気味の声で電話をくれるのに。どんよりと低く垂れ込めた空模様も相俟って、いつもよりも余計に心配が募るばかりだ。メールしてみよう、と携帯をポケットから出したところで、教室のドアがガラリと開いた。入ってきたのは、びしょ濡れになったコガだった。

「へへ…おはよ」

すこし困ったような、無理につくった笑顔を浮かべながら、コガは自分の席へとやってきたが、いつもみたいな元気が感じられない。そばへ行ってどうしたの?と視線で問いかけてみたけれど、大したことじゃないから大丈夫、と曖昧に笑って返された。大丈夫な風には見えないんだけどなあ。それも気になるけど、この寒い中で濡れてきたんだからまずは早く拭かなくちゃ。風邪を引いてしまう。

「え?俺もタオル持ってきたからだいじょぶ!ってうわ!?」

自分が持ってきたタオルを、すこしだけ低い位置にあるコガの頭にかぶせて拭いてやると、水分を吸ってほんのり湿ったのがわかった。




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