※京白のエロですが途中までです…



夢をみた。どんな内容か端的に言えば、ひどく淫靡で甘くて、それでいて馬鹿げていた。

***

剣城の長い指が、熱を持った俺のものにするりと絡みつく。途端にびくつく自分の肩と、熱くなる吐息。明らかに興奮しているのが感じられて、情けなさと恥ずかしさで鼻の奥がつん、と特有の感覚におそわれる。それを振り払うように顔をすこし左右に振ってから剣城の顔を見たら、欲に揺らぐ月色の瞳と視線が合った。背中を駆け上がるいやらしい戦慄きさえも剣城のせいなら心地よかった。

くちゅくちゅと無音の空間にゆっくり響く音が鼓膜から俺の中を侵していく。

「ぅあ…っ あ、…つる、…ふぁ…まっ… あっや…!」

俺の制止を全く耳に入れず、手を動かすことだけに専念する剣城。現実の剣城と同じように黙ったまま、現実の剣城が絶対にしないことを俺にしている。頭がくらくらと熱に支配されて、その矛盾さえも今は意識の外だ。剣城の骨張った手の中に包まれたものは自分のものではないように思えるのに、伝わってくるじくじくした波が腰を疼かせるから今自分が剣城に触られているのだと理解できる。
ゆっくりと扱く指にたまらなく焦らされて、無意識に腰が揺れていた。はやく、もっと、欲しい。

次の瞬間急に剣城が手の動きを止めた。訳がわからなくて剣城の顔を急いで振り仰いだら、相変わらず月色が俺をまっすぐに見つめてくるばかりだった。中途半端にされた熱を早く昇華したくて、俺は四つん這いの姿勢をとり、自分から剣城に向かって尻を突き出す。
視線の先にぬめつく液体が入った小瓶が都合よく転がっていたから手を伸ばしてそれをつかんだ。蓋を開け瓶を傾ければ、引力に従って液体は手指へと伝う。液体に塗れた指を尻の穴に挿れてから、少しずつ掻き回した。
以前たまたま見せられたいかがわしいDVDの中で男に向かって尻を突き出し懇願していた女と同じように、震える指で尻の穴を広げながら、催促の意味も込めて剣城へと見せつけるように。

「ん…っぁ…は、やく…ぅ…!」

はしたなくてみっともない姿なのに、剣城に見られていると思うと興奮してしまう。垂れた先走りが白いシーツを汚した。
ガチャガチャと剣城がズボンのベルトを乱暴に外す音が聞こえて、また中心が熱を蓄える。剣城のひやりとした手が尻に触れて思わず声が出た。

「ひぁっ…!」

それには構わずに剣城は、熱くそそり立ったものを俺の中へと一気に埋め込んだ。

***

あきれるほどに自分の欲求をありありと映し出したその夢は、翌朝目を覚ました俺の脳裏に吐き出した精とともに焼き付けられ、消えない塊となった。
日常のふとした瞬間によぎるそれ。汚らわしいし恥ずかしいからはやく忘れてしまいたいのに、そう願えば願うほど転写された夢の映像は濃くなっていくばかりだ。もがくほどに絡みつく蔦と同じ。忘れたい、と考える時点でそれに囚われているのに、気付かないまま迷路の中に入りこみ、忘れたころに漸く出られなくなったことを悟る。

それを思い出すたびに身体が熱を持て余してどうしようもなかった。練習後に風呂で、夜中に布団の中で、膨れ上がった欲を鎮めるために自分を慰める日々が続いた。
初めこそ剣城への罪悪感があったけれど回数を重ねるごとにそれは欲に塗り替えられて、気付けば剣城ならどんな風に触ってくれるのかとか、あいつの指は俺より長くて細いから、指を挿れてもらえたらきっとすぐ前立腺に届くのだろうかとかそんなことばかりを考えるようになった。剣城の声を思うだけで背中に甘い痺れが走る。剣城に抱かれたくて、身体が毎日涙をこぼした。

ある日の訓練時、俺は剣城と久しぶりに顔を合わせることになった。こう言ってしまうと身も蓋もないが、剣城をおかずにし始めてから俺は剣城を意識的に避けていた。そのせいか、剣城の顔を見て鼓動が高まる。同い年のやつらより落ち着いた佇まい、固い意志がこもった月色の鋭い目、誰とも群れないけれど不思議と人目を引く雰囲気。本物の剣城はやはり、纏う空気も表情も格段にかっこよかった。
これから訓練が始まろうというのに俺は剣城から目が離せなくなっていた。自分の中心がすこし熱と欲を滲ませはじめる。だめだ、今はまだ待ってくれなければ困る。
奥歯を噛み締め、頭の中で自分を叱咤した。落ち着け、こんなことで気が散っては究極に近づけない。そう言い聞かせ胸の辺りをぎゅっと握りしめて押さえつけるようにする。教官の声なんか耳に入らなくて、必死に剣城を俺の中からシャットアウトしようとしていた所へ、それを割くように低い声が響いた。

「すみません教官、白竜が体調悪そうにしてるので、救護室に連れて行ってもいいですか」

剣城が俺の肩に手を置きながら、信じられないことを言った。俺は慌てて否定しようとしたが、それより先に教官が「分かった、早く行け」と言い早々に説明へ戻ってしまったために剣城と置いてきぼりになってしまった。どうしよう、と自分らしくもなく妙に焦る。救護室への道を歩きながら、剣城が俺に付き添ってくれる理由が分からなくて頭に疑問符が浮かんだ。

「つ、剣城…なんで、急に」
「…なんか体調悪そうに見えたからな …大丈夫か?」
「っ、ありがとう…」

そうだ、剣城はこういうやつだった。無口だけど冷たいわけじゃない。ぶっきらぼうな気遣いの言葉に、胸がどきりと音を立てる。また身体に火が灯った。
救護室に着いて、とりあえずベッドに腰かけた。体温計を寄越して、「じゃあ俺は戻るから」と背中を向けた剣城に俺は思わず抱きついていた。

「な…!?白竜…!?」
「体調は…悪くないんだ…」
「剣城… 頼む、…俺を… っ…抱いて、ほしい…」
「は…!?お前、何言って…!」

剣城が慌てるのも構わずに、俺はユニフォームの上を脱いだ。もう自分の中の衝動が抑えられなかった。剣城は真っ赤になって固まっていた。熱っぽい視線で剣城を見つめる俺をしばらく凝視したあと、まぶたを閉じすこし考える素振りを見せる。次に小さくため息が聞こえた。

「…わかった」

剣城の返事に身体の熱が上がる。
引かれるのはわかっていたけれど、こんな状況に置かれて止められる理性などもう残っていなかった。嬉しさに手が震える。

「どうすればいいかとか分からないから、お前に任せるけど」
「あ、ああ」

頷き、まずどうするんだと考えてからふと思いついてベッドを降りる。応急処置用のガーゼや絆創膏、消毒のオキシドール、頭痛薬などが所狭しと並ぶ棚を見渡し、見知った容器の軟膏を取り出した。

「…じゃあ、…始めるぞ」
「…ぶっ…!」

妙に堅苦しくなってしまい、剣城が吹き出した。相当ツボに入ったのか下を向いて震えながらくつくつと喉の奥で笑いをかみ殺している。
なんだか悔しくなって、俺は仕返しの意味もこめてベッドの端に腰掛ける剣城の股の間に座り込んでユニフォームのズボンを思いきり下げた。突然の展開に驚く剣城をよそに、剣城のものを取り出して指先でなぞってから、ぱくりと咥え込んでみる。そして上から下まで執拗に舐めた。鈴口を舌先で割るようにほじくり、先走りを掬い取ってから、じゅるじゅると音を立てて吸い付く。

「…ん、…っ む…… んぅ…」
「ちょ…っ!は、…く…っ」

いつもと違い慌てる剣城に、すこし優越感。舌でいやらしく舐めるたび質量を増す剣城のものを口いっぱいに頬張って、俺のものもまた熱を持ち始めた。

「…く、ぁ…っ!」

剣城がイって俺の顔に剣城の白濁がもろにかかる。思った通りどろっとしていてあたたかかった。すこし舐めてみたら、やはり苦い。
次はどうしようか、と思った瞬間腕を掴まれて視界が反転した。気づけば保健室の天井を背に剣城が俺を見下ろしている。急な展開に混乱してぱちぱちとただまばたきを繰り返した。

「エロすぎんだろ、お前」
「つ、」

るぎ、と名前を口にしようとしたら荒々しく唇を塞がれた。ぬるりとしたおそらくは剣城の舌が、俺の口の中を犯すように動く。舌が絡めとられて、呼吸ごと奪われそうだった。

「んん…っ は、…ん…っ ぅ」

押し倒されながら剣城にキスをされているのがうれしくて、ちょっとだけ涙がこみ上げる。剣城からの強引なキスを甘受していたら、下半身に痺れが走った。剣城が膝で俺のものをぐりぐりと押している。剣城の膝の動きに反応して先走りが下着を湿らせていくのがわかる。
ズボンを脱ぎたいけれど、キスをされたままでは訴えられない。でも剣城は聞き入れてくれなかった。

「ん、んんぅ…っふ… ぁ…!つる…っ」
「…っは、…お前もイけよ」
「んや、ぁ…っ!つ るぎ、…ま…っ あぁっ…あ…!」

下半身が大きく波打ってから、吐精感と疲労感に襲われる。べったりと張りつく下着の感覚に恥ずかしくなる。剣城の膝だけでイかされた挙げ句、ズボンまで汚してしまった。
剣城にこんなことをされるなんて思いもよらなくて、期待と共に腰が疼いた。ズボンを下着ごと剥がすように脱ぎ捨て、足を開いて剣城に見えるよう座り直す。再びゆるく勃ち上がりかけている自身を自分がいつもやるようにして扱いた。

「んっ…ぁ、…は… ぁあ…っ!」

剣城が俺の様子を凝視してくる。
ごくり、と剣城が唾を飲み込む音が鼓膜を揺らす。今の俺を見て剣城がどう思っているのかとか、剣城が俺を見ているという事実を考えると頭が沸騰しそうだった。頬も舌も指先も、身体のすべてが熱い。今の状況の何もかもが俺を興奮させる材料にしかならなかった。
一度扱く手を止めて、先ほど棚から取ってきた軟膏の蓋を開ける。剣城に向かって尻を突き出し、四つん這いの姿勢を取った。指先で白く柔らかい軟膏をたっぷり掬い、尻の穴へ指ごと深く挿れる。穴を広げるように指を掻き回しながら軟膏を塗り込めば、ぬちゃぬちゃといやらしい音がいやに大きく響いた。剣城の視線を受けてまた自身がだらしなく蜜を垂らす。

「あっ… や、ぁ…ん ん…っ」

後ろを解していたらふと気配を感じて振り返ろうとした刹那、俺の中にもう一本、つぷりと何かが入ってきて肩が大きく跳ねた。確かめるようにゆっくりと入ってきたそれは剣城の指だった。
剣城の細長い指が俺の中を埋めていく。俺は自分の指を引き抜いて剣城の指の感触に集中する。一本、二本と本数は増えていき、気づけば俺は剣城の指を三本咥え込んでいた。

「…お前ん中、あっつ…」
「は、ぁ… んぁ…あっ!…つるぎぃ… !ぁ、あっ! ゃ、そこ…!」

剣城が指をばらばらに動かすたびにある場所を掠めて、体中に痺れが走る。剣城の指が俺の中にあるという感覚の恥ずかしさと嬉しさでさらに興奮が高まった。後ろも思考回路もぐちゃぐちゃに蕩けてもう何も考えられない。ただ剣城が欲しくて、腰が揺れた。
指の感覚がもどかしくて自分から剣城の指を締めつけてしまう。脚に力が入らず体を支えていられないので、尻だけを高く突き出したままの姿勢で剣城の指と自身がシーツと擦れる感覚に喘いだ。

「…、そろそろ、いいか…?」

剣城が指を抜いてから俺に問いかける。俺は返事のかわりに小さく頷いて、ひくひくと震えながら剣城を待ちわびる自分の穴を指先で広げた。

「ん… っいれ…て、…」

途切れとぎれにそう、伝えた直後剣城の熱いものがぴたりと尻に当てられて、緊張と期待に胸がまた鼓動を速める。夢よりも剣城は優しくてあたたかくて泣きそうになった。
次の瞬間、剣城のものが中をかき分けてゆっくりと入ってきた。よく解したことと、とろとろに溶けた軟膏のおかげでずいぶん滑りはいいけれど、それ以上の熱と圧迫感で自分の意思とは別に身体が剣城を押し戻そうとしてしまう。自分の指を挿れて幾度となく達したことはあったが、本当の男を受け入れるのは初めてだからやはりきつかった。でも、ようやく剣城とひとつになれる嬉しさで今はそれさえも心地いい。




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