自分の級友で、チビで弄りがいがあって、同じく級友のアルル曰く泣き虫で怖がり。そんなあいつが、まさか危険だと散々言われている地上の世界へ自ら行く、なんて言い出すとは。前々から色々面白いやつとは感じていたがここまで来ると無謀どころか最早馬鹿の域だ。けれどそれもまた一興。オレは地上行きを宣言した馬鹿──もといルチルを、そのことをネタにからかってやろうといつもの調子で言葉をかけた。

「ルチル、お前さっきは思い切ったこと言ったよなぁ。ありゃオレでもびっくりしたわ」
「ジェル…言っとくけど、オレは本気だからな」
「わーかってるって。お前バカだけど嘘はつかねーもんな」
「バカって言うな!」
「うんうん、ごめんごめん」

そう軽く茶化しつつも、ルチルの目も言葉も真剣なことは分かっていた。 自分の身がどうなっても、いや、命の危険なんて考えていない。必ずこの任務をやり遂げてみせる。そんな強い意思が、澄んだオレンジの瞳から、いつもより少し低く力強い声から感じられたからだ。本当はもっとあからさまに笑うつもりだったけど、なんだか気が変わってしまった。

次の授業が移動教室で他の奴らが皆先に出てしまったのをいいことに、オレはルチルの肩に腕を回して引き寄せてみる。するといつものように柔い頬に握り拳を押し付けてくると思ったらしく、ルチルはこちらに腕を伸ばし防御する姿勢を取った。オレはそれを見計うと眼前にきた手首をさっと掴んで後ろへ押し退け、鼻先がくっ付きそうなほど顔を近付けて小さくつぶやく。

「お前のそういう所が、面白ぇんだよな」
「へ、なん──」
「ん」

ルチルが何か言いかける前に、オレはその唇を自分のそれで塞いでしまった。
前にたまたま見たドラマのラブシーンを記憶から引っ張り出しながら、唇は重ねたまま顔の角度を変えてみたり、少し開いている薄い唇の隙間から舌を捩じ込んで腔内をゆっくり舐めてみたり、緩急をつけながら口付けを深くしていく。くちくちと耳にこびりつく水音に混じりその都度漏れるルチルの鼻に抜ける声や、時折舌先に当たる尖った犬歯の感触がなんだか余計に興奮を掻き立てた。

「っ ふ、…ぅ 、ッ、んん… っん…!」

夢中になって口付けに耽っていたら、苦しそうな声と共に自由な側の手で背を叩かれはっと我に返る。ゆっくり唇を解放してやるとどうやら息の仕方が分からなかったのか、ルチルは浅く乱れた呼吸を整えていて。謝罪の言葉と共に唾液で濡れた唇を親指の腹で拭ってやった。

「ごーめんごめん、苦しかった?」
「…っ急に、何すんだよ…!」

まあ尤もな反応だ。ここは真面目に答えてやろう。

「お前の真剣な顔にクラッときたからつい?」
「はぁ…!?」

訳が分からないといった顔で眉根を寄せるルチル。こりゃ理解してもらえるのは相当先になりそうだ。こいつが万が一地上から戻ってきたら、そこから教えねぇとな。

「ま、それは今度な」
「今じゃなんか都合わりーのかよ」

無自覚でそういうことを言うか。いや、無自覚だからこそなのか。単に勿体ぶられるのが苦手なのもあるんだろうけど、状況によっちゃ相手を煽るだろ、それ。

「そうだな、今は都合悪いかな。だから今度」
「ふーん?でも必ず教えろよ?」
「ハイハイ」
「忘れんなよ!」
「分かってるって」

いまいち分かってないようだがとりあえず落ち着いたようだ。一安心。安心ついでに柔らかい頬の感触を堪能しておこう。そう思い立ったオレはルチルの血色のいい頬を指先で軽く摘んでやった。


アナグルモールにハマった時に書いたので出してみました



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