おれはあの日、おひめさまはえほんの中だけじゃなくて、ほんとうにいたんだってことをしったんだ。

それは、おかあさんといっしょにおうちのちかくのこうえんへあそびにいったときのことだった。
おれとおかあさんが手をつないであるいていたら、まえからきたきれいなおんなの人が、おかあさんにこんにちはとあいさつをしてきた。おかあさんとおれもそのきれいな人にこんにちはといったらその人がうしろにむかって
「しんちゃん、ほら、あいさつは?」
といった。だれかいるのかな?っておもってみていたら、そのきれいな人のうしろから、おおきなくまのぬいぐるみをだっこした子が、かくれんぼしてるみたいにちょっとずつでてきて、小さなこえでおれに
「こんにちは…」
ってあいさつをしてくれたんだ。

しんちゃんといわれたその子のきれいなみどりいろのかみは、お日さまのひかりでつやつやしていて、おおきな目はかみよりももっとみどりいろだった。
ぱちぱちとまばたきをするたびにながいまつげがゆらゆらゆれて、このまえみつけた、きれいなちょうちょのはねみたいだとおもった。

それをみたおれは、むねのところがなんだかふわふわなものであったかくなって、その「しんちゃん」のことがとってもきらきらしてみえた。

「しんちゃん」ってなまえのほかはなにもしらなかったけど、おれはその日、しんちゃんといっぱいあそんでいっぱいわらった。わらったしんちゃんのおかおは、えほんの中でみたどんなおひめさまよりも、きらきらでかわいかった。
おれが手をだしたら、しんちゃんはぎゅっとにぎってくれたから、すごくうれしかった。

いえにかえってから、おかあさんにしんちゃんのおはなしをたくさんしたら、おかあさんが「かずなりは、しんちゃんのことがだいすきになったのね」とわらった。


***


あとで分かったことだけど、その「だいすき」は、俺にとって生まれて初めての恋だったんだ。
…という、俺が小さい時のかわいらしい初恋の話を無事に語り終えたところで、目の前でそれを聞いていた真ちゃんの眉間にわずかだが皺が寄っていることに気付いた。ひでーなあ、俺の美しい思い出なのに。

「あーあ、あの時の『しんちゃん』はほんっとかわいかったなあ…まさに天使、いや、お姫さんだったわ」

わざと大げさにため息をつきながら言えば、目に見えて真ちゃんの眉間の皺が深くなる。そういう意外とわかりやすいところが好きなんだよな。

「でもそうやって照れてる今の真ちゃんもかわいいけどな」
「なっ!おまえはバカか!」
「はーい真ちゃんバカでーす」

からからと笑って返せば、いい加減にしろと怒られて、ぺしんと頭をはたかれてしまった。やっべえ、これはあとで帰りにおしるこ奢らねーと。こう見えてわがままお姫さんのご機嫌取りなら大得意だ。
またあの時みたいな、花が咲いたような笑顔が見れる日がいつか来ますようにとほんのすこしだけ女々しい願い事を胸に、俺は練習へ戻るためベンチを立った。





プリズム恋ごころ

(それはきれいな宝物)




高尾と緑間がちっちゃいときにもしも出会ってたらきっと高尾は恋に落ちてただろうなっていう妄想が爆発しました




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