※赤司の性格迷走
※口調も迷走
「赤司…こ、これさ…おかしくね…?」
「大丈夫だ。これが正しいと聞いている」
キセキの世代の一人であり、今は洛山高校バスケ部のキャプテンをつとめる赤司征十郎が、何を根拠にかわからないが無駄に自信に満ち溢れた様子で俺の両肩に手をおいて満足げに頷く。何が正しくて大丈夫なのかさっぱり理解できない。
赤司は今日突然、俺が通う誠凛高校へやってきた。時間は放課後で、ちょうど体育館でバスケ部の練習をしていた時だった。赤司は俺を見つけるなり開口一番に「降旗。今日は君に似合いそうな衣服を持ってきたんだ」と、近年稀にみる生き生きした表情でそんなことをのたまい、わけがわからない俺の腕を引いて部室へと連行し、このメイド服一式を渡してきたのだった。
その嬉しそうな表情が、いつも俺をいじめてくる時のそれだったので、断ることができず俺は素直に渡されたメイド服をとりあえず着用して今にいたる。
しかしこのメイド服、激安量販店で見かける仮装用のものと違い、とても上等そうな手触りだ。…嫌な予感がする、けど聞いてほしそうな顔をしている赤司を放っておくことは憚られたので聞かざるを得なかった。
「…ていうかなんでメイド服なんか…一体どこで手に入れたんだよ?」
「もちろん特注で作らせたよ」
…やっぱり。赤司の得意げな顔を見ながら、この服にかけられた手間と値段を想像して頭が痛くなる。日本でも有数の自家の財力と権力を無駄遣いしないでほしいと今ほど思った瞬間はなかった。
「しかもサイズまでぴったりってどういう…」
「この間転びかけた君を支えたときに大体のスリーサイズを押さえさせてもらった」
「……」
どうしてこいつはこういう変なところにばかり抜け目のなさというか器用さを発揮するんだろう。それはもっと他の大事な場面で使ってください。頼むから。
「もしかして、デザインが気に入らなかったかい…?」
俺の色々な意味合いがこめられた沈黙というか間(ま)を、どうやら違うほうへ解釈してしまったらしい。不安そうにこちらの顔色をうかがう彼は先ほどまでの表情が嘘のようだ。なんだか怒る気にもなれなくて、がくりと脱力しつつこちらの疑問を突っ込む。
「そうじゃなくて〜…デザインはかわいいかもしれないけど、これをなんで男の俺が着なきゃならないのかってことで…」
「人間、似合う服を着るべきだという先人の言葉があったからさ」
前言撤回。急に復活してもっともらしい屁理屈こねやがった。
「俺こんなの似合ってもうれしくねえよ…」
お金持ち全員がそうではないだろうから誤解を与えたら悪いけど、どうしてこうお金持ちの人はどこか変わってるんだろう。
そう思わざるを得なくさせるこいつを誰かどうにかしてほしい。呆れながら小さくため息をついた次の瞬間。
「あと」
「…っうわぁ!?」
真面目な声とともに腕をぐんと引かれバランスが崩れる。これは地面に体が叩きつけられるととっさに身を硬くしたが、いつまでも衝撃は来なくて代わりに、背中からふわりと床に押し倒されたことを知る。
「メイド服を着るとこういう時に盛り上がるらしいからね…?」
「な、っ!盛り上がるわけ、な、ぁ…っ!?」
気がつけば赤司の整った顔が俺を覗き込んできていて、びっくりしながらも抵抗しようとした、けれど。スカートの中に手を入れられて脚を触られる。その手が冷たくて変な声が出た。
「けど嫌々言ってたわりにちゃんと着てくれてるじゃないか?」
「あ、ぅ…スカートの中っ…手入れんな…!」
「断る」
赤司はくすくす笑いながら余裕綽々だ。俺ばかりが不利で悔しくなる。けどそれでも嫌だとはねのけようとか思わなくて、それどころかこの先を期待してしまう自分がいた。
「う、っぁ… や、め…」
「綺麗な脚だね…」
「っ」
脚を上から下まで丁寧に撫でられる。その触り方がすごくくすぐったくて肩が跳ねる。言われた言葉が恥ずかしくて顔に熱が集まった。
「さ、わんな…っ…!」
「ここ、かな?」
「あぁ…っ!ゃ、めろ、…そこ…っ」
脚を触っていた赤司に突然、下着越しに俺のものをやんわりとつかまれて全身に痺れが走る。
抵抗したいのに足にも腕にも力が入らない。手で口を覆う隙(ひま)もなかったせいで声をすべて聞かれてしまって、恥ずかしさで涙までじわりとこみ上げた。
「ふふ…かわいい声だ…」
赤司が控えめに笑って俺の前髪を梳いてから、細長い指で涙をすくう。その動作が綺麗でうっとりと見惚れたところでまた意識を戻された。
「ガーターベルトが緩いな…うまく付けられなかったか?」
「っそんなの…付け方なんか、わかるわけ…!あ、っ!外すなよっ」
俺が苦労しながらなんとか着込んだものを赤司は慣れた手つきであっという間に脱がせていく。黒いニーソックスがするりと足から剥がされたのがわかってまたなんとなく恥ずかしくなった。
赤司の目を見れなくてそっぽを向いたままでいたら、赤司の顔が急に近づいてきて思わずぎゅっと目を瞑る。
「ん… っ」
それと同時に首筋にちくりとした痛みが走って、赤司が離れていった。おそるおそる瞼を押し上げてみたら、先ほどの場所を満足そうに見つめる赤司とばっちり目が合った。
「今…まさか」
「男除けだよ」
「っそんなんしなくても俺に男なんか寄ってこないし、てか明日も練習あるのに…ここじゃ隠せねえじゃん…っ」
「見せつけたいんだ、君は僕のものなんだってね」
口の端をにやりとつり上げて、赤司が不敵に笑う。痕の付けられた場所は部活の練習着や体操服に着替えたら絶対に見えてしまうから、恥ずかしくて困る。今の状況も忘れて明日はどうしようと考えていたら、下着も下ろされてしまった。スカートの中に何も穿いていない状態になって、無意識に脚に力を入れて閉じてしまう。なんでこんな恥ずかしい思いを今しなくちゃいけないんだ。ていうか練習中だから、戻らないと、ダメなのに。
「っあ、赤司、待って…!」
「僕以外のことを考えてるからだよ」
赤司の、色が違う宝石みたいな瞳に射るように見つめられて、脚の中心にある熱がじわとすこし濡れた感覚に羞恥心を大きく煽られた。心臓の音がいやに大きい。こんなの絶対赤司に聞こえてる。恥ずかしくて目をぎゅっと閉じたら、赤司が俺の頭をふわりと撫でた。あたたかい手のひらが気持ちいい。
「光樹、大丈夫だから、すこし力を抜いて?」
赤司の優しい声に安心して、身体の力をすこしだけゆるめる。
「それでいいよ」
ずっと閉じていた瞼に赤司の唇が触れる。赤司がしてくるスキンシップの中で二番目に俺が好きなものだった。ゆっくり瞼を上げて、赤司と視線をを合わせる。俺は赤司の背中に腕を回して身を任せることを受け入れた。
「…練習サボった言い訳、一緒に考えろよ?」
「もちろん、そんなことはお安い御用だ」
何かと思えばそんなことかとでも言いたげな赤司の余裕な顔がちょっと気に食わないから、めいっぱい甘えまくってやろう。
***
ふわ、と爽やかな香りを感じてすぐ赤司に唇を塞がれる。赤司は香水とかはつけないから、きっとシャンプーか何かの匂いなんだろう。
「っ …ん、ぅあ …は…」
赤司の匂いと口の中を蹂躙する舌の動きに酔いしれて、身体がまた熱くなる。くちゅくちゅと響く濡れた音が恥ずかしい。
スカートの中に赤司の手が入り込んできて肩が跳ねた。何も穿いてないせいか赤司の指先の動きに敏感になる。
自身にしなやかな指がすっとからみついて包まれる。そのまま緩急をつけながらすりすりと擦られた。
「ぅ、あ…! ぁあ…っ」
「、気持ち、いい、かな…?」
「っん、き…くな…っ あ…!」
腰から上がってくるじっとりとした甘い痺れに足が震える。頭が熱に浮かされて何も考えられない。
口から出ては、人のいないがらんとしたこの空間を蝕む声は、自分のだなんて信じられないくらい甘ったるくて恥ずかしさを煽られた。
「ん…っぅ …や…だ…っ」
「かわいいよ」
口調は優しいのに、扱く手はだんだん激しさを増していく。自分の意志の届かないところで身体が反応するのを止められない。
「や、ぁあ…っ んぁ…!」
とろとろとこぼれる自分の先走りが赤司の指先を濡らしていることにまた顔が熱くなる。今の自分の顔を赤司に見られたくなくて俯いた。
突然赤司が俺の両足をつかんでぐいと開かせてから、脚の間に顔を埋めてきた。あまりのことにびっくりしていたら、自身に柔らかい濡れたものが触った。慣れない感触に腰がずくりと疼く。
「!?…あか…!ぁあっ…!」
これが赤司の舌だということを、羞恥と気持ちよさに冒された頭のすみに僅かに残る理性が認識する。そしてまた心臓がより鼓動を速くした。
赤司の熱い舌が俺の自身を上から下まで丁寧に這う。じわじわと波のように下半身を支配する快感に抗うことができなくて、息のしかたも忘れそうになる。だらだらと先走りをこぼし続ける俺の自身を、赤司は執拗に、まるで猫がお皿のミルクをさらうかのように舐めた。
「も…っ、 …やめ…っあ、ひぁあ…!」
「…、…じゃあ仕方ないね。嫌ならこれ以上僕は何もしないよ。」
残念そうな顔で、俺の先走りと唾液に塗れた指先をいやらしく舐めて赤司が言う。
「え?っや、今のは、口滑ったっていうか…」
「だがやめろと言われたのに無理やりするのはダメだろう?」
「ぅ、でも…」
中途半端に高められた熱がずくずくと腰を疼かせて、無意識に膝をこすり合わせてしまう。こういう時の赤司はすごく意地悪だ。
「では僕にどうしてほしいのか、具体的に言ってくれるかい?」
「っそ、んなの、」
「言えないなら、そのままだな」
そんな恥ずかしいことなんか言えるわけがない。でもこの昂りをそのままにしておくことはできそうになくて、震える指先をスカートの中へ滑らせた、けれど。
「一人で勝手に気持ちよくなるのを許した覚えはないよ?」
厳しい言葉とともに、がしりとその手を掴まれて制止される。仕掛けてきたのはそっちからのくせに、焦らすなんてずるい。新しい刺激を待つ俺のものがひくりと震えた。
「なんて言えばいいか、わかっているね?」
決定権など与えられてはいないその言葉に、喉の奥でひゅっと息が詰まる。唾を飲み込んで、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「っ…、あ、赤司の…口で、俺を、気持ちよく、し、てください…」
「まだ足りないな。僕がその程度で許すとでも?」
わかっていたんだ、本当は。でも俺はそうやって追い詰められたかったのかもしれない。下半身を蝕む熱に思考が冒されて、エロい気分になってるんだ。
「あ、っあかしの、口で…俺の、っペニス、気持ちよくして、ほしい…っ!」
「…ふ、合格だ」
やさしく微笑んだあと、生暖かい粘膜に包まれてきゅっと口をすぼめられた瞬間。ぎりぎりまで張り詰めていた精が一気に弾けた。
「ふぁ…っ!?ぁ…ぁああぁぁ…っ!」
「…っん、ずいぶん溜まっていたようだね?」
「…の、飲ん…っ」
「あぁ。少しこぼしてしまったが…」
赤司のフェラであっという間にイかされたうえに精液まで飲まれてしまって恥ずかしいやら混乱やらで泣きそうだ。
「…っあ、う…っ赤司のばかぁ…」
「君がかわいいからいけない」
悪びれる様子もなく間髪入れずにきっぱりと言い切られて。気のせいか試合の時よりも楽しそうで生き生きしているように見える。たいそう機嫌がよさそうな顔と反対に、赤司は俺の顔が青くなることをのたまった。
「でも本番はこれからだよ?光樹」
「…!」
そうだ。赤司が俺をイかせたくらいで終わるはずがない。きっとこれから隅から隅まで味わいつくされるのだ。
すでに先ほど吐き出した精液で少し汚れたメイド服を思いながら、俺はひっそりと肩を落としたのだった。