引っかかることなく足首まで落ちた下穿きの内から熱を纏った白龍の昂ぶりが見えて、アリババの腰がじりと疼く。アリババは白龍の寝間着を捲り上げてそれを少し太い自分の指で包み込むと、先ほど白龍がしていたように早急な手付きで扱き始めた。

「えっ、や、やぁ…!まっ、アリ、ババ、どのぉ…!」

弱々しい抵抗の声を上げて身を捩り逃れようとするが、白龍の昂ぶりはあっという間に硬さを持ち、先からは我慢しきれないと言うように透明な先走りがとろとろと溢れ、アリババの手の滑りを良くしていく。自分のせいで今白龍のそれからいやらしい粘着質な水音が立っているということにアリババは再び煽られた。征服欲からか優越感からか、粟立つような感覚が腰から脳髄へと伝わって、アリババの中心が重くなった。

「は …!あぁっ…、ふ ゃあ…っ」

肩をびくびくと震わせながら、白龍は甘い声を上げる。自分のものとは思えないようなこの声があまりにも恥ずかしくて、生理的な涙がこみ上げた。青色の瞳から硝子玉のような滴が次々と零れ落ちていく。それを見てアリババは、白龍の濡れた頬に唇で優しく触れた。次に犬や猫が傷を癒すためにする時のようにぺろぺろと涙を舐めた。それがくすぐったくて、白龍は堪えていた熱い息を吐いた。
アリババは一旦休めていた手の動きを再開させる。白龍の端正な顔立ちが快楽で蕩けるさまに、アリババは、頑なに閉じていた花が、夜露に濡れたその花弁をようやく開かせるのを見つけた時にも似た高揚を感じていた。

「…白龍、気持ちいい?」
「ん…っき、かないで…くだ さ…っぁ、」

眉尻を下げて、せり上がってくる気持ちよさに震えながら耐える白龍の姿は扇情的だった。アリババの手も白龍の陰茎も、溢れ出る蜜でしとどに濡れていた。アリババは精で張り詰めた白龍のそれを一度解放してやろうと決めて、手の動きを速めた。

「あ、ぁ、っ …ま、やだ… アリ…!はぁあああぁぁぁ…っ」

溜まっていた熱は随分と濃かったらしく、アリババの手指と白龍の腹に大量の粘液が撒き散らされる。久しぶりの吐精の感覚に白龍は身体から力が抜けたようで、ベッドの上にくたりと手足を投げ出した。

「…気持ち、よかったか?」
「…最低のハレンチ野郎…」

アリババの言葉に対し、くすん、とひとつ鼻をすすったあと、白龍は涙声でそう告げた。少なからずアリババは白龍の態度にショックを受けた。俺はよかれと思って白龍を快楽へ導いてやったのに、あんまりな言葉だ。アリババはすかさず言い返す。

「んな、っ!大体おまえがオナニーなんか始めなきゃ良かったんじゃねえか」
「俺だってこんな事したくありませんでしたよ…!あんたが俺にのしかかってきたせいで…っ責任取ってくださいよ!」

そこまでこぼしてから白龍はハッとする。とんでもない失言だった。慌てて起き上がるとアリババが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。白龍の吐き出した精でべったり濡れた手を見せつける。

「ああ、わかったぜ。俺のせいでおまえは勃ったから、責任取って気持ちよくしなきゃ…だよな?」
「た、っ、確かにあんたのせいで勃ちましたけど、気持ちよくしろなんて言ってません!」

からかう気持ちが存分に含まれたにやにやとした笑みでアリババは白龍に問い詰める。白龍は否定するが、言えば言うほど墓穴を掘るばかりだった。

「じゃあ俺は具体的にどうすりゃいいの?」
「そ、れは、…」

赤くなりながら言いよどむ白龍に勝ったと思う気持ちと、かわいいと思う気持ちが湧いて、アリババは白龍をじっと見つめた。白龍は年相応に色事への興味はありながらも、それらを口に出したり普通に話したりするのはやはり気が引けるらしい。しかし真面目なのと、このまま言い負かされるのに納得がいかないのとで、下を向きながらなんとか言い返せないものかと考えているようだ。
それを眺めながらアリババは改めて白龍が危うい格好であることに気付いた。上半身は殆ど覆うものがなく、かろうじてあるのは腕に引っ掛かっている脱がせた夜着だけで、下半身は先ほど絶頂に導いてやったそれが隠されないままになっている。今は白龍の脚の角度で見えないがそれはそれでそそる景観だった。
白龍のを弄ってやるばかりで自分のは全く放ったままだったせいで、アリババの下半身の熱は質量を増して痛いほどだった。アリババは白龍の言葉を待てずに再びベッドに押し倒し、耳元で囁いた。

「…ごめん、白龍。俺もう限界…」
「えっ、アリババ殿…ちょっ…!あぁ…っ!」

アリババは自分の体重をかけて白龍の腕を押さえつけた。それから白龍の胸へ顔を埋める。アリババのざらざらした舌が白龍の胸の突起を執拗に舐め転がす感覚に、先刻の射精で敏感になっている身体は面白いほど反応を見せた。

「あっ… ゃ…!ひ、ぁ あっ!」

白龍の反応に気をよくして、アリババは胸ばかりを集中的に攻めた。唾液のぬめるぴちゃぴちゃという音が白龍の聴覚からも羞恥心を掻き立てる。

「や、だぁ…そ、こ ばっか…!」
「…じゃあ、下も弄ってやるよ」
「んぁ、あ…!っしゃべ、…!」

再び勃ち上がり始めている白龍の陰茎を、アリババは空いている手で刺激してやる。そうしながら、胸の突起を歯で甘噛みしてから吸い上げた。突起はすっかり熟れてつんと上を向いており、唾液に塗れて月明かりを反射する様がたまらなくアリババの情欲を煽る。
上下両方から与えられるもどかしい快感の波に、白龍は泣きながら喘ぐしかなかった。

「あぁ… ひ、っ…!あ っ…はぅ…っ うぅん… や、ぁ…!」
「っ、あれだけ…文句たれてたくせ、に…っずいぶん…よがる、んだな…?」
「あっ…ぁ 、うるさ、…っん ぁ…!」

アリババの手に扱かれ、さっき一度射精したにも拘わらず白龍の陰茎は緩く勃ち上がりだらしなく蜜をこぼす。アリババはすっかり抵抗がなくなった白龍の腕を押さえていた自分の指を舐めた。前にちらと小耳に挟んだ程度だったが、挿入をする前に滑りが悪いと相手が痛いので、指で慣らすときに唾液を使うといいと聞いたことがあった。それが役に立つ時がこんな突然くるとは。頭の隅にぽつりとあったこの知識に感謝しながら、アリババは唾液で濡らした指を白龍の尻の方へと移動させ、尻たぶの奥にある窄まりへゆっくりと挿し入れた。
急な異物感に白龍は肩を大きくびくつかせる。

「っひ、…どこ触って…!」
「いいから、力抜け」
「そん、な 無…っ んん、んぅ…っ!」

アリババも張り詰めた熱を解放したくて必死だった。白龍が拒絶して身体を捩ろうとするのをキスで塞ぎ、鈴口を弱く引っ掻いて快感に蕩けさせた。

「ん…ちゃんと、気持ちよく…してやる、から、っは……任せろって…」

身体は快感に従って反応するものの、白龍は不安で仕方なかった。ぐいぐいと中を掻き分けて入ってくる指の圧迫感はなかなか拭えず、吐き気すら覚えそうだ。もう嫌だ、早く抜いてくれと思ったその時、内壁を探るアリババの指がある場所を掠めた瞬間、甘く強い痺れが腰から背中を一気に駆け抜けた。予想していなかった快感に白龍は上擦った声が出る。

「ふぁ…っ!?」
「!…ここ、どうだ…?」
「あぁっ…!や、やめ…!」

アリババはそこが前立腺で、大きな快感を生み出す場所だと分かったらしく、見つけたしこりを繰り返し押した。その度に白龍の身体に甘い痺れが走り、白い背がしなる。萎えていた陰茎もいつの間にか腹につくほど反り返って、震えながらはしたなく先走りを垂らしていた。
アリババは白龍の陰茎から滴る蜜を指に取り、再び蕾の奥へと二本の指を潜り込ませた。前立腺を刺激したお陰もあり、中はだいぶ解れている。けれどやはりまだきつい感覚を受けるので、指を出し入れするごとにアリババは前立腺を押したり、挟み込んで擦ったりした。

「はぁっ…アリババ…どのぉ…っ」
「わり、もうちょいだから…っ」

波打つ微弱な快感に白龍は涙を流す。はやく、此処へ決定的な快感を与えてほしい。アリババの指で解れてきた後孔は既に熱く蕩けて、物欲しそうにひくついていた。

「ん…っは、やく…ぅ…!」

白龍の懇願がアリババの鼓膜を甘く揺らして、理性の最後の一山を崩した。
アリババは指を引き抜き、自分の熱く腫れ上がった欲を一気に白龍の中へと打ち付けた。

「ひ…っ、ぐぁ…!」

指と比べ物にならない質量に突然貫かれ、白龍は喉から声にならない悲鳴が漏れた。あまりの苦しさに身体中が強張る。その拍子に中を穿つアリババも強く締め付けることになった。

「っ…!はく、力…抜け…!」

アリババの無茶な言葉に言い返したかったがそれさえも叶わないほど強烈な圧迫感に、黙ったままなんとか呼吸だけを整えようとする。本来男性器を受け入れる場所ではないこんな場所で繋がろうなんて、無理だ。そう言おうとアリババの方を向いたら、アリババの大きく暖かな手がゆっくりと白龍の頭を撫でた。

「…無理、さして…っごめんな…」

額に少し汗を滲ませながら、眉根を寄せて苦しそうなのに、それでも白龍を気遣ってくれるアリババの優しさに、白龍は自分の苦しさとは別の涙がじわりと込み上げた。

「…っ、く …い、え…!」

アリババ自身の先走りも潤滑剤になり、少しずつ白龍の奥へとアリババが腰を進める。そして先ほど探り当てた前立腺の場所を押しつぶした途端、白龍の身体に熱が灯った。指で刺激された時なんて忘れてしまうほどの大きな快感が身体を突き抜けた。

「っはぁああ…っ!」

一層甲高い声が、明かりのない部屋を埋める。見えた喉は月明かりに白く光っているようだった。
アリババは白龍の反応を皮切りに律動を開始した。そこだけを狙って、なんて器用な技量は持ち合わせているわけがないので、構わずに内壁を前立腺ごと突き上げた。肌のぶつかる音と水音、白龍の喘ぐ声がアリババの理性も本能もぐずぐずに溶かしていく。

「ご、め…っ!イく…!」
「あっ や、っあぁっ…!は、ぁあ っおか、し、くな…っ…!は、ぁ、ふぁあ…っ あぁああ―…!」
「っ、く…ぁ…!い、ぃ…っ!」

白龍が限界とともに絶頂を迎え、吐き出された白濁が腹や胸を汚す。内側がきつく締まる感覚に、アリババも続けて達し、白龍の中に熱を全て注ぎ込んだ。




事後独特のぐったりとした倦怠感に全身が支配され、もう今は指先さえも動かしたくないと思っていると、アリババが萎えたそれをずるりと白龍の尻から抜いた。緩く内壁が擦られる感覚に、また熱い息が漏れる。僅かな刺激さえも拾ってしまう敏感な身体が恨めしい。

「ん…っは、っぁ…!」
「あっ、わり…!」

白龍の後孔から先ほど注がれた白濁が伝う。
アリババはベッドの横に備え付けてあった手巾で白龍の身体を拭いてやってから、隣のベッドにある薄手のタオルケットをかけて静かに部屋を出た。白龍は何も言わずに自分を置いていったアリババに少しだけむっとしながら、かけられたタオルケットを肩の上まで引き上げた。

相変わらず海原は月の柔らかな光を映しながら静かに揺れていた。濃紺に溶ける金は仄かにきらめいて、まばたきをする度にちらちらと色を変える。それを眺めながら、白龍は身体を心地よく包む眠気に意識を委ねた。




アリババが濡らして絞った手拭いと飲み水を持って戻ってくると、白龍はすうすうと寝息を立てていた。そういえばまだ尻の中から白濁を掻き出してやっていなかったなあと思ったが、せっかくの眠りを邪魔するのも忍びない気がして、静かに隣へ腰かけるだけに留める。
寝顔を見ながら、アリババは白龍のなめらかな髪を指先でかきあげた。白い額に触れるだけのキスをして、また寝顔を覗き込んだ。藍色の長い睫毛がふるりと揺れる。

「朝になったら、…」

アリババが小さくこぼした一言は、部屋の空気を僅かに揺らして消えた。
小窓の向こうに広がる夜空は、薄く白み始めていた。





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