※リフ→アレ一目惚れ
※超次元俺得
チームメイトの何人かで集まって、ニースの家でFFIの試合中継を見る
というのが、最近の俺の日課になっていた。
FFIもいよいよ後半、それぞれのチームの勝ちたいという想いが、画面越しからでもつよく伝わってくる。
だから俺たちの応援もつい熱がこもって、静かにしなさい!なんて怒られるのもついでに日課だ。
ちなみに今日はBブロックの試合。ドイツのブロッケンボーグとスペインのレッドマタドール戦。
「はーぁ、オレも世界と戦いたかったなぁ…」
画面を見ながらぽつり、ついため息が出てしまう。負けたのは事実だから仕方ない、けどやっぱり世界とぶつかりたかったのも本当。
「そうだな、まぁまた次もあるからそれまでがんばろう」
「そうだけどさー…」
ニースにちょっと不満をこぼしながら、視線だけを画面にやった、その時
「………」
「どうしたの?リーフ」
ビーチに声をかけられてはっと意識がもどる。
「いや、えっと、この…こいつさ…」
「どれ?」
「ほら、この…緑のやつ」
「あぁ、えっと…?…アレクサンダー・ハウゼン?…てやつ?」
ホリーが首をかしげながら、おそらくドイツ読みであろう名前を読み上げる。
「なかなかやるよね、このDF…動きに無駄とスキがない」
「…そうだな、素早いし、状況を瞬時に判断して、相手がボールをどこに持ってくるか完璧に把握してる」
ジョーも注目してたみたいで
熱心に画面を見つめながら、静かにプレースタイルを述べた。
「うん …あっ!」
「シュートだ…!」
「DFなのにこんな強力なシュート技まで隠してるなんて…やっぱり世界はすごいな!」
「……」
「…リーフ?」
びっくりした。
完璧なディフェンスよりも、隠されていたシュートよりも。
固い意志を秘めた深いドレスデンブルーをたたえた双眸が、鮮やかな歓声と、彼をとりまく仲間の輪のなかで、ふわり、とやわらかくほころんだことに。
それはまるでちいさな花が花弁をひらかせたかのような、可憐で幼い笑顔。
名前と笑顔しかしらない遠い異国の彼は、俺の目を 言葉を 鼓動を、一瞬にして、さらっていったんだ。
金木犀は笑う
(それが恋だとは まだだれもしらなかったのです)