アブラゼミの声が耳にこびりつく夏休みの昼下がり。色気も、ムードも、へったくれも、生産性も、何もかもないない尽くしのセックスに、俺たちはただ耽っている。

***


和泉は自分の家だと必ず自分以外にも誰かがいて落ち着かなくて嫌だから、という理由で俺の家に行きたがった。
今日はちょうどお盆が終わった翌日で、父親は仕事、母親は友人と出掛けたために、都合よく家に誰もいない状況が俺たちを出迎えた。
自室の冷房をつけて熱い空気を冷やす。ベッドに座るよう和泉に一声かけてから、冷たいお茶を用意しに俺はキッチンへ下りた。

「お茶入れてきた。外暑かっただろ」
「ああ、ありがとう」

お茶を勢いよくあおったところを見ると、相当喉が渇いていたらしい。白い喉がお茶を嚥下する音と共に上下する。
その様に、俺は何故だか目を奪われてたまらなくなった。途端に身体の奥から急に湧き上がる、いかがわしい気持ち。女と違って男は些細なきっかけですぐそういう気持ちになる。窓を閉め切り冷房をかけた室内とはいえ、空気までも焼きそうなアブラゼミの声がねっとりとした暑さを想像させて、じり、と心の余裕をなくさせた。

「跳沢、しようか」

いつの間にかコップを空にした和泉は俺の心を見透かしたように、艶やかな笑みを口元に浮かべていた。水分でしっとりと濡れた唇に嫌でも目がいってしまう。心臓の音が大きくなっていくのがまざまざと感じられる。

「な、」

にを、と続けようとした言葉は和泉の唇に塞がれて行き場を失った。冷えた舌が焦らすように口の中をやんわりと舐めていく。俺が舌を出すと待っていたように絡めてきて、鼻にかかった甘ったるい声が漏れた。触れ合う舌から感じる麦茶の味にさえも酔っているみたいだ。

「、ん ん…っ」

ずくん、と腰が疼いたのを感じた。ざらざらした舌の感触を味わいながら、すこし乱れてしまった和泉のシャツの裾から指を滑り込ませて脇腹を撫でると、和泉はぴくりと身じろいだ。どうやら脇腹は弱いらしい。きめ細やかな肌はうっすら汗をかいていた。
ああ、だめ、だ。ぐらぐらと熱に浮かされながらもなんとか踏みとどまっていた理性の糸は、和泉からの甘い誘いでぷつりと切れてしまった。ひとところ綻んでしまえばもうあとは崩れていくだけだ。理性、なんて大仰に銘打っているくせに、ほんのちょっとつつけば簡単にひっくり返ってしまう。実に馬鹿げたものだ。
色々なことを頭の中で言い訳しながら、口づけを先程よりも深くしていく。和泉の細い指先が、俺の髪を梳いた。


***


「あ…っ、…は… 、ぅあ…!っ…と びさ、…ぁ あ あっ!」
「…っ いず、み … !」

荒い息づかいと汗に湿る身体。余裕なんてものは持ち合わせていない。あるのはお互いの行き過ぎた性欲だけだ。恋と呼ぶには余りにも稚拙で、でもセックスフレンドのように淡白ではない。どろりと胸に溜まるそれは何とも形容し難い不快さも併せ持っている。

「い、…ん… ひぁ…!っも イ、 …っ―!」

和泉の中がきゅうと締まって、必然的に、俺も張り詰めていた欲が弾ける。俺が放った熱と和泉の内の熱が混ざり合って、お互いの境界線がわからなくなっていく。
酸素をむさぼるように荒い口づけをしながら、縋るように、その白い肌を掻き抱いた。








久しぶりすぎてリハビリ…
真波奏の中途半端なエロです
中学生男子の持て余した性欲がぶつかりあう汗臭いセックス大好物です



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