あいつの躯はとてつもなく細い。


理由なんていくらでもあるんだろう。
まだ未成熟だからとか、元々の骨格のせいだとか。
きっとこれから背だってもっと伸びて、体つきも大人に近付いていくだろうから、心配なんていらないのだ。

俺は心配している訳じゃない

ただ、強く抱きしめたらその躯が折れてしまいそうで俺はそれが怖いのだ。

あまり筋肉が付いているとは言えない脚も、掴めばごく簡単に掌に収まってしまうだろう腕も。

全てが硝子でつくられた飾りもののようで、自分が触れて親しむことは許されないと、誰に言われたわけでもないのにあいつの前に見えない線を引かれた気がした。

けれどヒトと呼ばれる生き物は他の動物と異なって天の邪鬼なのも事実で。

赦されない、侵してはいけない
―壊れるから。

言われる言葉に比例して欲望は自分の中を占めていく。

そこにある背徳感が好奇心という名の欲望にすり替わる。

―触ってみたい。

そう頭で意識した時には既に俺はあいつの白磁器のような手を握っていた。

見えない線を踏み付け、足で詰り、消す。

風介と俺は、小さな掌を通じて互いの間を支配していた距離を無にした。
突然のことに戸惑い、眉をしかめる風介。
海とも空とも付かない不思議な色あいの瞳が、すうと細められる。

ふれあうことのなかったはずの二つが繋がった。
その事実、もとい手の感触を確かめるように、俺は風介の少しばかり小さな手指を自身のものと絡めあわせた。

風介の手は俺に比べてごつごつしていなくて、すべらかで傷ひとつなく柔らかかった。
爪は小さくて、うっすらと透けて見える桜色が、風介の男っぽさを感じさせない手をさらに可憐に見せていた。

俺は風介の左手の小指に、自身のかさついた唇を当てた。




とても細い小指だから




(きっと俺の手で守ってやりたくなったに違いない)







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