※フィフス時代捏造



わかっていたんだ、あいつは別の世界を見据えてここへ来たことぐらい。
わかっていたんだ、あの月のような瞳に俺のことなんか映っていないことぐらい。

思えば最初から、剣城はフィフスセクターの中でも異彩を放つやつだった。ずば抜けてサッカーが上手いのに、いつだって誰とも群れずひとりボールを蹴る剣城の背中からは、すこしばかりの寂しさとそれを隠してしまう程の強い意志を感じた。
俺は自分の下にたくさんの奴らを従えていたけれど、俺に毎日くっついてご機嫌取りのために言い寄ってくるその他大勢よりも、俺に見向きもせずひたすら、どこか遠くにいる誰かを憂えるような目をしたあいつの方に興味を引かれた。

夜空を思わせる濃紺のなめらかな髪が視界にちらつくたび、言いようのないざわめきが胸を締め付ける。気がつけばあいつを目で追っていて、ごく稀に視線が絡み合えば身体の奥から熱いものが込み上げてきて、喉が渇いて言葉を継げなくなる。他の誰かと楽しそうに話している場面を見かければ、きゅうとちいさく胸が軋むような感覚にも襲われた。

それらはすべてひっくるめて、いわゆる「恋」という不可思議な感情のかたまりで、俺が剣城に対してその恋愛感情を抱いていたらしいと気付いたのは、剣城がゴッドエデンを出てしばらく経ってからのことだった。

わかっていたんだ、あいつは別の世界を見据えてここへ来たことぐらい。
わかっていたんだ、あの月のような瞳に俺のことなんか映っていないことぐらい。

なのに、目尻からじわと滲む水分は俺の心の奥を知っているかのように、引力に従い落ちる。
ひとつ零れた滴を合図に、涙は内から止め処なくあふれ出て瞬く間に頬をすべり落ちていった。

俺は嗚咽を殺して泣いた。

好きだったんだ、あいつのことが。







片恋月夜







知らない間に京介に恋してた白竜くん




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