もっと俺に頼って、触れて、甘えてみせて。

君は自分の中に色々なことを抱えこみすぎているよ。その細い両腕じゃあ全部をだきしめきれなくて、すき間からひとつふたつ、零れていく大切なものが俺からはよく見えるんです。

どんなに苦しくても、悲しくても、それを俺の知らないところで綺麗に隠してしまっては、「速水先輩」って羽根のように笑う。
君の笑顔が本物かそうでないのか俺はわかっているのに、もっと近くにいたいのに、肝心なところで俺の中に住んでいる臆病虫が騒ぎだす。ちくちくした小さな痛みと一緒に、言いたい気持ちが喉の奥でつかえて出られないまま胸に積もっていく。毎日がそんなくり返し。

君はずるいんです。大丈夫ですよってやさしく宥めるように言われたら俺がそれ以上怒れないことも、仕方ないって引いてしまうこともわかっていて笑うから。
けれど君に嫌われたくなくてあともうすこしの指先を引っこめて、だんまりで心に蓋をする俺も狡いんです。
こうして、はやく、君に限界がきて俺に泣きついてほしい。痛みに震える小さな手を握って、ふわふわしたキャラメル色のくせっ毛を何度も梳きながら、「大丈夫、俺がいますから、」と抱きしめさせてほしい。こんなことを思う俺も、同じくらいに、あるいは君よりもっと、狡いんです。だから、



(もっと俺に頼って、触れて、甘えてみせて。)




お互いに譲らないこのずるさを溶かしてくれるほどの勇気をだれか、俺にください。




笑わないマリアに祈る



お互いもう少しが近付けない速天




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