初めて霧野蘭丸という人物を見た時はこの目を疑ったものだ。生意気にも背は俺より高かったが、春の日差しを透かす白い肌、緩やかにつり上がった大きな目を縁取る長いまつげ、強い意志を持った青とも緑ともつかない瞳、桜と同じ淡い色をもち、二つに結われた特徴的な髪、どこにいてもぱっと人目を惹く華麗な動作。どこをどうとっても男とはとても形容しがたい特徴ばかりを持っていたが、口調や行動は幼なじみだという神童よりも粗野で男らしかったのには少々驚いた。
フォワードとして前線で戦う俺からは遠い位置にいたけれど、ディフェンスの腕前は目を見張るものがあったし、何よりも時折見せる花がほころんだような可憐でかわいらしい笑顔は、一瞬にして俺の心をさらっていった。

フィフスセクターに管理されるようになってから情熱を注ぐことが出来なくなったサッカー部の練習だったが、霧野がいるならもう少し残っていてもいいかもなと思ってしまった辺り俺はかなり不謹慎だろうけれどそれでも構わない。
俺の名前を呼ぶ声も、稀に見る憂いを含んだ横顔も、歩くたびに軽やかに揺れる髪も。すべて俺のものにしてしまいたいという欲望と、それは絶対に叶うことはないだろうという諦めにも似た感情を呼び起こさせて、俺の胸の奥を小さく締め付ける。らしくない感覚に皮肉を込めて自分をかるく嘲笑しながら、それでも俺は霧野を見つめることはやめようと思わない。恋をして馬鹿になってしまった俺は、たとえ相手が振り向いてくれなくても、別の誰かを思い慕っていても、姿を見るだけで、笑う顔を見られるだけで、ほかの全てが許せてしまうのだ。



センチメンタルな愚か者(これが恋の魔法なのですか?)





人様の本にゲストとして寄稿させていただいた小話です
まだまだ供給の少ない南蘭というカプですが彼女の本をきっかけに広がってくれたらと思います!

ゲスト参加させていただきありがとうございました!

しかし南沢先輩のキャラが全然別人すぎますなwww



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