※暗いだけでエロくない




普段はピアノの鍵盤の上をなめらかに躍動する彼の指は今、俺の首に絡みついて空気の通り道を遮っている。脳にいくべき酸素は喉元で引っかかり、掠れた狭窄音となって口から僅かにこぼれただけだった。神経間の信号の伝達速度は鈍っていくばかりだというのに、俺は不思議なほど冷静に彼を、キャプテンを見つめては憂えていた。
靄がかっていく意識と霞む視界の中でキャプテンの表情が浮き彫りになっていく。

彼はただ泣いていた。俺に向かって何か、おそらくは絶対に聞かなければならない大事な言葉をささやきながら、真珠にも見紛うくらい綺麗な雫を眦からこぼして。

置いていかれそうな意識の端っこでそれをぼんやりと眺めて思う。ああ、この人には俺がいなくちゃだめなんだ。
周りから見つめてくれている人も、背中を守ってくれている人も、いつでも傍で支えてくれている人もいるというのに、この人はそれに気づいていない。だって、真正面から俺だけしか見ていないんだもの。

可哀想で愛しくて、けれどそんなこの人から離れられなくて、この首を絞める指先を甘受する俺もやっぱり同じように狂っているのかもしれない。



天馬くんが苦しいくらいに好きで、失うのがこわくてどうしたらいいか分からない神童と、そんな神童を分かっていてでもやっぱり好きだから受け入れる天馬くん




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