「それでね、その時のキャプテンのシュートが本当にすごくて!」

真ん丸などんぐりまなこをきらきらとビー玉のように輝かせながら、松風は俺に語りかけてくる。さっきミーティングルームで見ていた昨年のホーリーロードの決勝戦のDVDが相当お気に召したらしい。俺に言わせればあんなのあくびが出そうなパス回しだったけれど。
ふうん、とかへぇ、とかそれなりに相槌を打ちながらこいつの話を聞き流すこと30分。神童キャプテンを始めとする雷門イレブンは、まあずいぶんとこいつに気に入られているものだ。

「速水先輩のフェイントのかけ方とか、天城先輩のディフェンスとか、どれもカッコいいなあ…」

白い頬を桜色に染めてうっとりと空中に視線を彷徨わせる松風は恋を夢見る女子顔負けだ。そんなこいつの視線が画面の中の雷門イレブンに向けられているのがなんだか面白くない。

「ねえ剣城、聞いてる?…ていうかさっきから機嫌悪そうだけど…どうかしたの?」

気付けばどんぐりまなこに眉根を寄せた俺の顔が映りこんでいた。下から覗き込まれているので松風の表情は上目遣いになっている。
この天然はなんで俺の機嫌が傾いているのか分からないらしい。ため息がひとつこぼれる。仕方ない、教えてやるか。

「おまえのせいで機嫌が良くねえんだよ」

手を目の前のやわらかい頬に添えてまっすぐ松風の目を見つめた。本当はイライラより呆れとか諦めの方がまさっているけれど、わざと声を低くして凄んでみれば案の定松風はびく、と身を硬くする。すこし怯えたような揺れる瞳を見て優越を感じる。
サッカーをしている時の楽しそうな笑顔もいいけど、こんな顔をするのは俺の前だけだ。その事実につい口角が上がる。

「な、なんで…俺のせいで剣城が怒るんだよ…」

おそるおそる、俺の顔色を伺いながら尋ねてくる松風の予想通りの行動がかわいくて今にも笑いたくなるのをこらえながら、松風の耳元に唇を寄せてささやいた。

「おまえが、俺以外のやつばっか見てニヤニヤしてっから…だな」
「っ…!」

松風が息をきゅっと詰めたのを感じて横目で見る。瞳を伏せ、耳まで赤くして俺のズボンの布を握りしめながら、こみ上げるもどかしさに耐えるこいつはとてつもなく色っぽかった。俺の心臓が大きく音を立てる。
ざわりと湧いた加虐心にそのまま従って、松風の耳朶をゆっくり舐め上げた。続けてやわく食んでみる。

「や、ぁ…っ!…つ、るぎ…!」

一オクターブ高い熱のこもった声に情欲を煽られる。いつの間にか涙の膜で潤んだ瞳が物欲しげに俺を見つめていた。これを天然でやってのけるところはもはや才能と言ってもいいくらいだ。
松風と視線を絡ませながら顔を近づける。お互いにまぶたを閉じて、俺はこいつのあかい小さな唇に自分の同じそれを押し付けた。一度離してまた、角度を変えて啄むように唇を触れ合わせる。甘ったるいキスに意識が曖昧になっていく。

「ん… っは、ぁ… んぅ…んっ!?」

松風が息継ぎをしようと口を開けたタイミングを見計らって、噛みつくように唇を奪う。隙間から舌をねじ込めば肩を跳ねさせて反応する。頬の内側や歯茎の根元を執拗に攻めると、そこは弱いのだろうか、唇の隙間から熱い吐息とともに甘い声が洩れた。
今にもこぼれてしまいそうな程に涙で蕩けきった青い瞳は、光を吸い込んで滲んでいた。

「ふぁ… っん、…や ぁ、あ…」

背筋を駆け上がる征服欲が、松風のもっと乱れた姿を見たいと脳に伝えてくる。それを押さえ込めるような理性はもうこいつという麻薬に侵されて残ってやしない。

松風が履いていたスパイクを脱がせて床へ置いた。靴下もそのままするりと足から剥がす。

「…つるぎ…?」

松風の両脚を抱えて間に身体を割り込ませた。松風をソファの背に押し付けるような姿勢になる。

「や…っ、な…何す…!」

俺が何をしようとしているのか、松風は怯えた目でこちらに抵抗の意を伝えてくるけれど知らん顔をする。本気で嫌なら殴って逃げればいい。それをしないのは受け入れても構わないってことだろ。
松風のズボンをまくり上げて太ももを持ち上げた。内側に唇を寄せてきつく吸う。松風がびくびくと身体を揺らしたのがわかって気分がよくなる。吸った場所をなぞるように舐めてもう一度音をたててキスをした。くっきりとついた痕にほくそ笑む。松風の白い太ももに赤はよく映えて綺麗だ。

「…っばか…!こんな…恥ずかしい場所に…」
「てめーが俺を見ないのが悪い」
「わ…悪いのは剣城だろ…っ…もう、俺…」

青い瞳が物欲しそうに揺らぐ。俺の手首に遠慮がちに指を絡ませて、もじもじと言いにくそうに顔を赤らめる松風があまりにかわいすぎてつい、喉の奥から笑いがこみ上げた。

「仕方ねえな…望み通りにしてやるよ…」

松風の細い肩を押してソファへ倒した。確かここへ入るときドアに鍵はかけたから人が来る心配もない。今日は授業を後回しにして、このミーティングルームでゆっくり過ごすことにしてしまおうと考える。

もう一度松風にキスをしたらその唇があまりに甘いものだから、もうこのまま溺れてもかまわないとさえ思った。






毒入りシュガーポット



微裏ということで、どの辺りまでなら大丈夫か模索しつつ書いていたら大変長くなってしまってすみません^o^;

甘い感じにしたかったので自分としては満足な出来です!
大変楽しく書かせていただきありがとうございました!





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -