hell or heaven
あなたに連れられた 5


 結局、三人で支部の託児所に向かうことになった。ヘイクロの非番の日を選び、先方にもメールで知らせた。
 当日は、怖がっていた支部ではリウリョクに会うこともなく通り過ぎ、併設されている託児所には約束の時間より少し遅れて着いた。
「信じられない。クラウン通りが全面通行止めなんて」
「今日の内に着いて良かったな」
「マイカ街を通り抜けたのは正解だった」
 大通りの工事で迂回せねばならず、支部に着くまでに疲れてしまった。
 着いたと思うと、託児所では子供たちの熱い歓迎に会い体力を奪われる。鳴らされた呼び鈴に、子供たちは親が迎えに来たと思って我先にと飛び出して来たのだ。親でないと分かると次は遊び相手だと認識してじゃれついてきた。
 ようやく子供たちの囲いを抜けて託児所の所員に案内される。廊下を進む途中では、ヘイクロの腕にぶら下がって遊ぶ子供がいた。ヘイクロは長身なのに妙な威圧感もないので、いい遊び相手になっている。ハイシロは子供と手を繋いで一緒に歌を歌いながら歩いていた。
 自分はと言うと、何故か子供が遠巻きになって見ているだけだった。鬱陶しくなくていい。視線を遣ると子供は泣き出しそうになる。
「ツァサって子供受け悪いよね」
 ハイシロがしみじみと言う。
「大人受けもいいとは言えないけどな」
 ヘイクロが追随する。はっきり言って余計なお世話だった。
「ごめんなさいね。子供たちも淋しいんです」
 申し訳なさそうに所員の女性が言う。泣き出しそうだった子供を抱き上げてそのまま歩き出した。
「ご両親が医局課にお勤めの子供たちは、長い時は一週間、親御さんに会えないんです。そうでない子供も長くて2日。友達や所員と楽しそうに遊んでいても、他の子供たちが帰って行く度、淋しそうにしているんです」
 女性は、でも、と明るい声を発した。
「あの赤ちゃんが来てからは子供たちはいつも楽しそうで。夜の間も赤ちゃんの周りで静かに見守っているんですよ」
 今日のメインでもある赤ん坊の話が出て思わず身構える。女性に他意はないようで、それ以上話は続かず、辿り着いた託児所の職員室に招き入れられた。奥まった部屋に通され、女性は子供たちを連れて戻った。
 託児所の所長だと名乗ったふくよかな女性に、約束の時間に遅れたことを詫びると、笑って許された。
「スローライフが主流の昨今ですしね。時は金なり。スロースタイルな人生はお金で買う、というのかしら。私もそれに倣おうかと思います」




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