hell or heaven
あなたに連れられた 7


「あなた方に協力していただこうと考えたのは、法務課のリウリョクさんからの推薦があったからです。それと、支部の通達から」
 詳しく聞くと、早く赤ん坊を追い出したかった支部は、養子縁組に必要な実親の承諾を、コウノトリ便の誤配先である自分たちにして欲しかったようだ。……リウリョクの真意の程は分かりかねるが。
「私どもが生まれる前、子供というものは国をあげて社会で育てるというものとなりました。児童相談所が機能しなくなって久しくなります。このようなことは、以前でしたら児童相談所に行けば何らかの措置がとられたでしょう」
 だが、今現在、国営だった児童相談所は予算の都合上、廃止となった。
「このヘッドストーン支部と本部との間柄は、決して良い関係とは言えません。そのために、犠牲になる命があるというのは耐え難いことです」
 けれど、と所長の声は小さくなる。
「本当のご両親が名乗り出ないというのでは、私どもにできることは限られています」
 しばらく沈黙が降りた。それぞれが考えに沈んでいた。
「私たちにできるのは養親を決めるお手伝いだけですが、できる限りの協力はいたします」 
 双子が珍しいものでも見るように視線を寄越す。だが、一番驚いているのは自分だ。命が犠牲になる、という所長の言葉に引きずられたのか。感傷的になっている。
「とても有り難く思います」
 もう後には退けない。覚悟を決めることにした。
 ハイシロが、赤ん坊を見て帰りたいと言うと、所長は快く案内してくれた。
 職員室から出て廊下を少し行くと看護士の詰め所があり、その横に数名の赤ん坊がベビーベッドに寝かされていた。
「どっちかなぁ」
 コウノトリ便が送られてから、二ヶ月は過ぎている。
 ベビーベッドに書いてある記録を見ると丁度二ヶ月目の赤ん坊が二人いた。ハイシロが迷うのを横目に見ながら、じっと赤ん坊を観察する。所長とヘイクロは後ろの方で迷う自分たちを見守っている。
「この子だ」
「早いなぁ、本当に?」
「ああ、……似ている気がする」
「……」
「それに、呼ばれた」
「何て?」
 精一杯の皮肉を込めて笑う。
「美しく聡明なお兄様、私です」
 言った途端、ハイシロは顔をしかめる。それなりに美人と言える顔が台無しだ。
「絶対嘘だね。ということで、この子」
 反対のベッドを指して自信あり気に言った。




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