すべての物事を好きか嫌いかに分けなくてはならないとき、イブキにとってワタルは「嫌い」だった。嫌いじゃないけどという言葉が好きだという要素になるのなら、好きじゃないからという言葉が嫌いだという要素になってもおかしくないだろう。

小さな頃から彼を見てきたせいか彼を見ると幼い頃を思い出してなんだかイブキはイライラしてしまうのであった。
胸に詰まっていく空気にはきっと悔しさだとかやるせなさがたくさん溶けていて、イブキの気分をますます重いものにしていくのだ。そんな自分がますます腹立たしくて、イブキにとって一番必要ない。
従兄で、とても優秀で、今ではポケモンリーグのチャンピオンになっているワタルと、同じ時間を過ごしたはずなのに立ち位置はこんなにも離れてしまった。


「ワタルにはきっと分からないわね」
「なにが」
「なんでもないわ」


ほんの少しの休暇を使ってフスベシティに戻ってきた彼はそうか、と小さく悲しげに笑ってそれっきりだった。ああ、失敗したなあと思う。




∴勝手だって知ってるのよ





20130927



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