シロガネ山の頂上で彼が何を考えているのかはしらない。あんなに寒くてただただ真っ白いだけの世界が、コトネは怖かった。
吹雪の吹き荒れる極寒の中の、彼のバトルに飢えた目がどこまでも恐ろしく、初めて受けた体を射抜かれるようなあの衝撃をまだ覚えている。そしてその後の敗北の味も。

セキエイリーグをも制覇した自分を負かした人。彼と同じ道をコトネも歩いていたはずだ。なにかがちがうとすれば、あんなに冷たく寂しい世界をコトネはまだ知らなかった。

ふしぎと、「私もそうなってしまうかもしれない」とは思わなかった。思えなかった。そう思ってしまうことはレッドに大変失礼で、おこがましいことだと思った。なんでかはあんまりわからない。とりあえず言えるのは、コトネとレッドの歩いてきた道は同じでもそこで積み重ねたものはちがうはずだということ。これから歩く道は重なるかどうかわからない。うん、そういうこと。

レッドはコトネのことをどう思っているのだろう。戦績はコトネの連敗記録を更新しつづける。レッド以外には負けないからそれでも構わないなんてちょっとおかしいのかもしれないけど本心。レッドにコトネはどう見えているのだろうか。各上の相手にわざわざ挑んでくる憐れなトレーナーとか思われてたらすこし嫌だなあ。
だけどもし、なにか感じてくれているならば。あの冷たい世界から彼を救おうだなんて、グリーンさんさえしてあげられていないことをコトネができるはずもないのだけど、やっぱりコトネはコトネだけの別ルートで進みたくて、今日もホワイトアウトに脳内を侵されにいくのだ。




∴気絶をもういちど






Title.蝋梅
20131207




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