「ごめんねハルカちゃん。明日のことなんだけど、急に父さんに呼び出されて」


ポケナビから聞こえるダイゴの声が伝えるにはこうだ。突然デボンコーポレーションの社長であるツワブキの命令で、明日、お得意先との会食に御曹司であるダイゴも立ち会わなければならなくなり、よってハルカと1ヶ月前からしていた約束をドタキャンせざるをえなくなった、と。
残念だとか落胆だとか、そういう感情よりも先にしょうがないという諦めに近いなにかがハルカを包んだ。


「気にしないで、行ってきてください」
「本当にごめんね」
「だいじょうぶですから」


言葉を重ねるたびになんだか自分が強がっているように聞こえて嫌になった。

だいじょうぶ、本当にだいじょうぶ。楽しみにしていたことが突然目の前から消えて胸がきゅっと泣いたのは違いないけれど、でもちゃんと理解しているのだ。ダイゴは大人で、ハルカよりも大変で、やらなきゃいけないことがたくさんある。

見た目はこどもでも、心はそんなに幼くはないんです。明日、一緒におでかけしてくれなきゃやだなんて、あなたの都合を考えずに駄々をこねるような真似はしません。
そう言いたいのだけど、そんなことを言ったらますます自分が小さくなる気がして、だから言えない。もっと他に伝える言葉や術があったならよかったのに、私もあの人も不自由だ。




∴ジュークボックスのためいき






20131101



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