素直で無邪気で優しくて嘘つきなリーグ職員さん
scene3/オモダカ狙いの暴行者くん01


 さて、今日もパルデアはいい天気である。相変わらずの全裸起床で、せっせと朝の支度をする。服を着て、ポケモンたちの世話をして、朝食を食べて、ついでにスマホでネットニュースを確認する。ちなみに、私のスマホはスマホロトムではない。時代遅れだが、ロトムが私に忠実とは限らないのだから、仕方ない。
 リーグ職員が連続で襲われている、という事件の記事があった。ただ、暴行者のことを誰も詳しく話せないことと、リーグ職員という地味で特殊な職にあまり話題性がないため、記事は少なかった。これはもう、ほぼ無いに等しいだろう。
 しかし、動くには好機だ。
「リュト、リリ、ちょっと作戦会議しよう」
 デンリュウのリュトとオリーヴァのリリが任せろと胸を張った。やはり私のポケモンたちは頼りになる。

 暴行者の出現場所の特定は難しい。出勤すると、噂話は入ってくるものの、先輩が言っていた程度の話しか耳に入ってこない。そして、オモダカは恐らく出て行かないだろうと皆が察していた。相手の思う壺になど、オモダカはならない。分かっている罠に入るわけが無い。ましてや、パルデアの為にならない。オモダカはパルデアに必要である。無意な危険に飛び込む人では無い。
 ただし、意味があると思った瞬間、危険に飛び込む人物なので秘書たちは悲鳴を上げているらしい。大変だな。

 仕事を済ませて、オリーヴァのリリを出す。いつもと違う私に、おやと先輩が声をかけてきた。
「シキさんのリリさんか。突然どうしたんだい?」
「あ、先輩。最近、暴行者が出てるそうなので」
「ああ、自衛というわけか。防犯意識が高くていいね。俺も相棒と帰ろう」
「とても良いと思います。それでは」
 私はタイムカードを切って、リーグの外に出た。

 さて、ここからである。私はリュトの入ったボールを撫でて、絶対に出てこないようにと念を込める。リュトは分かったと返事するように揺れた。よろしい。
「リリ、頼むよ」
 リリは任せろと跳ねる。元気でよろしい。
 つまり、そう。私は、これから"暴行"されに行かねばならない。

 タクシーをセルクルタウンから離れた位置で止めてもらう。降りて、ポケモンと歩きたいと告げると、愛情深いねと笑ってくれた。そういう事にしてくれ。
 それからリリと徒歩でセルクルタウンまで歩く。注意は散漫とする。なるべく隙を見せる。ポケモンたちはリリが追い払う。それだけ、それだけ。
 ひたすら待つ。
 待つことは好きじゃ無い。でも、これが必要ならば全く苦痛ではない。
 だって、待つだけだもの。

 がさり。

 ほら、来た。


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