素直で無邪気で優しくて嘘つきなリーグ職員さん
scene2/アオキ狙いの地雷系ちゃん02※完


 無事出勤していつも通りに仕事をしていると、後輩に感謝されついでに宝食堂の割引券をくれた。どうやら友達を殴って説教した後にお詫びで貰ったらしい。わあ、すごい。
「私、いりませんよ?」
「いえっわたし達すっごく助かったので!」
「それなら、でも、」
「受け取ってくださいお願いします!」
「ど、土下座はダメですよ」
 土下座しようとした後輩を宥めて、仕事に戻る。ふんふんと普段通りに働き、外回りをしてきたアオキにそっと避けられ、チリにガンをつけられ、ハッサクに会うことなく、オモダカから呼び出されもせず、ポピーだけはこちらから避けて、普段通りに帰宅しようとした。
 そこへ登場したのが例のでんじほうを浴びせた女性である。きゅるんっと効果音が付きそうな地雷系の見た目をしているが、おそらく年齢は見合わないものだろう。痛々しい。誰もが思っていただろうところに、偶々アオキが二度目の外回りから戻ってきた。
 そうしたらもうカオスである。地雷系女性はアオキにベッタリで、アオキガチ恋勢全員を敵に回した。こうなったらガチ恋勢の連携は急に取れるから凄い。そして便利である。普段の格好だが、地雷系女性は目が節穴なのか、私に気がつかない。
 なーんにもしなくても話が進みそうである。やったね。神さまは自浄作用もお持ちである。
 ガチ恋勢にアオキから引き剥がされた地雷系女性はそのままリーグ裏に連れて行かれた。その後ろをそっとオモダカが尾行して行ったのを私はしっかり見たので、そっと手を合わせる。かわいそうに。恐らく、リーグ出禁になる上に、何らかのマークがされるだろう。それはそれで私が動きにくいが、最終的にカリソン辺りに頼めば時空なんざ目ではない。時空移動ができる世界線に行った仲間が大変心強い。
 淡々と作業していると、アオキがじっとこっちを見ていたので無視して作業を進める。私、今回はでんじほうしただけなので、何にも心に響かない。だってこの世界でポケモンのワザを人間にぶつけるのが非常識とはいえ、無い事では無いのだ。
 なので、私は今日もいつものスイーツ好きなリーグ職員なのである。

 とまあ、何でもかんでも自動的に進むことだってある。全ては神さまのお導きであり、この世界の不和は神さまの害物である。それだけである。

「ところでシキさん、知ってるかい?」
「何をですか、先輩」
「リーグ職員が、リーグの外で、襲われる被害が出てるらしい」
「はあ」
「相手は圧倒的な強さのポケモンで職員を襲うだけ襲って、去っていくとか」
「それは、どうしてですか?」
「わからん。ただ、職員を痛ぶって楽しむ訳ではなく、なんかこう、誰かが来るのを待ってるとか」
「やけに詳細ですね」
「……俺の同期が襲われたんだ」
「成る程。すみません、不躾なことを言いました」
「いや、いいさ。誰でも不審に思うだろ」
「それで、その、その暴行者は誰を探しているのですか?」
「分からんが、俺の同期は何となく思ったらしい」
「はい」

「そいつは、オモダカさんが現れるのを待ってる、と」

 そういうパターンもあるのか。


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