◎飛ぶ為に@体格差にょたゆり


アルカヴェ/にょたゆり/長身スレンダー筋肉美女後輩×合法口リ巨乳先輩/体格差にょたゆり/飛ぶ為に/掌編


 空を飛ぶには、ありとあらゆるものを犠牲にするしかなかった。
 鳥は、空を選んだ。
 カーヴェは、そういう人だ。

 柔らかな体を抱き上げる。すうすうと図面台の前で寝てしまっていた彼女を、アルハイゼンは楽々と抱き上げて、せっせと自室に運ぶ。カーヴェの部屋が良いのだろうが、アルハイゼンはちょっと抱き枕が欲しかったのだ。
 ベッドに横たわらせて、するりと胸元のボタンを外す。ふわりと呼吸が楽になったらしい彼女の頭を撫でて、アルハイゼンはシャワーを浴びに向かった。
 寝る支度を整えて、カーヴェを前から抱きしめ、目を閉じる。とくとく、心臓の音がする。
 アルハイゼンは隼らしい。カーヴェは、極楽鳥だとか。旅人が言っていたそれを思う。その鳥は、何を犠牲にした?
 空を飛ぶために、鳥は骨の密度を落とした。地をかける足を細くした。手を、翼に変えた。
 カーヴェが極楽鳥だというのなら、それは彼女の犠牲の形に過ぎない。捉えられて、足を切られて、剥製にされて。色が足りなければ、飾り羽をつけられた。その屍すら尊厳を踏み躙られて、異国で売られる。
 許されない。アルハイゼンは真っ当に思う。この人がそんな存在であっていいわけがない。自己嫌悪、自責の念からくる優しさは、振り撒くのを許すけれど、アルハイゼンのように優しくしなくていい相手がいなければ。いなければ、彼女はどこまでも飛んでいって、空の果てで誰かに撃ち落とされる。
 これを他人は傲慢だというのか。アルハイゼンの、優しさだというのか。分からない。知る必要もない。
 アルハイゼンはカーヴェが好きだ。それだけ。
「ん、あるはいぜん?」
 泣いてるのか。カーヴェが寝ぼけて、アルハイゼンの目元を手で撫でた。濡れてなどいない。でも、カーヴェはよしよしとアルハイゼンの頭を抱き寄せた。大きな胸にぽすんと頭を沈める。
「いいこ、いいこ。ね、アルハイゼン。何も怖いことはないよ」
 ここは僕たちの家なんだから、と。


07/10 17:02
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