◎とある夜


アルカヴェ


 ひとつ、おちる。

 アルハイゼンの目の前にデザイナーが落ちている。
「カーヴェ、床で寝るな」
 声をかけるが、本人は夢の中。酒を飲んだ形跡があった。苦しそうな顔をしながら眠っているので、現実からの逃避は役立たなかったらしい。酒は適量が一番だと、アルハイゼンはよくよく知っている。
「ベッドに運ぶよ」
 声をかけて、抱き上げる。カーヴェは軽くはない。でも、アルハイゼンなら抱き上げられる範囲だった。
 自室に入り、ベッドに寝かせる。起きた時に、なぜアルハイゼンのベッドで寝ているのかと慌てるのだろうか。もう何度も起きていることなので、気にも留めないだろうか。
 カーヴェの巣が、このアルハイゼンの家であればいい。いつか巣立ってもいい。自由意志に任せたいが、できれば、一緒にいたかった。
「カーヴェ、おやすみ」
 隣に潜り込んで、包み込む。人の体温に、熱源を求めたカーヴェが擦り寄ってくる。すこし、愛おしさが積もった。だから、アルハイゼンはしっかりとカーヴェを抱きしめて、眠る。
 明日は朝から絶叫が聞こえてくるのだろう。


12/17 01:23
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