◎陽溜まりのこころ
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アルカヴェ/陽溜まりのこころ
カーヴェという人は優しすぎる。アルハイゼンは本のページを捲る。カーヴェは、贖罪の意識と共に、優しさを植え付けられて育てられた。
他人に優しくしなさい。そんな文句を言われてきたのではないか。人にされて嫌なことをしてはいけません。そんな文句も浮かぶ。
カーヴェの人となりは"優しい"より、もっと、苛烈なのだ。
アルハイゼンは思う。激情と愛情と、福音の人。カーヴェはいつだって、星の甘露を胸に抱いている。
誰かが言っていた。天才は天賦の才能そのものであり、常人には理解できないのだ、と。それは少し違う。人と人は努力なしに分かり合えない。時には傷つくことだって、必要だった。
アルハイゼンとしては、理解されたいわけではない。誰にも理解されなくとも構わない。
だが、この心に宿った小さな種は言うのだ。
「すきだよ」
ふと、夢現に聞こえたきがした。カーヴェが確かに言っている。それは、誰に向けての言葉だ。でも、問い詰めたら、きっと、彼はまた嫌な顔をする。
あの時(過去)の再来は、望まない。
「カーヴェ、」
「おはよう。まだ寝ていても平気だぞ」
そうじゃない。きみはまだ、そこにいるのか。
「カーヴェ、」
「なんだよ」
やや楽しそうな声だった。だから、アルハイゼンは夢現のまま、言うのだ。
「きみのコーヒーが飲みたい」
「いいよ」
きっと目覚ましになるね、と。
11/24 21:39