◎星月夜のこころ
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アルカヴェ/星月夜のこころ
アルハイゼンは決して優しくない。だけど、恐ろしいひとではない。カーヴェとしては嫌な面が目立つけど、こちらがなにかアクションをしない限りは無害な存在である。
もちろん、昔は違ったと思う。カーヴェとしては記憶がやや朧げだけれど、もっと遠慮のない人間だったきがする。
アルハイゼン、と呼ぶと、何、と返事をする。それがどこか愛おしいのは、カーヴェが彼にルームメイト以上の感情を持ったからだ。
カーヴェはアルハイゼンが好きだ。だけど、言うつもりはない。友達にもルームメイトにもなれないのは、あまりに不甲斐ない。
たぶん、アルハイゼンはカーヴェの恋心を無碍にはしない。酷い扱いなんて一つもしない。でも、カーヴェが耐えきれない。
この柔らかで甘い気持ちが日の元に晒されるのは、気分が悪い。
星月夜に密やかに交わされる、優しい気持ちだ。だから日の元にあるアルハイゼンに、カーヴェは言わない。
「すきだよ」
ただ、それだけ。ふとこぼした。ああ、好きだな。
アルハイゼンは眠っている。寝たふりをすることだって出来るだろうけど、今はただ昼寝に微睡んでいる。カーヴェはコーヒーを手に、思う。もし、アルハイゼンが今の言葉を聞いていたら。
きっと、それは破滅だ。悲しいことに、それが事実だ。故にカーヴェは聴かせないし、聞いていたとしても、なかったふりをする。
不誠実だ。脳内でセノが言う。ティナリもまた、非難をする。それでいい。カーヴェの星月夜の気持ちは、誰にも理解されなくていい。
理解されたいくせに、理解したいくせに、カーヴェのこの恋慕は知られなくていいと、本気で思うのだ。
矛━盾。それを人は受け止められるのか。
「……カーヴェ、」
「おはよう。まだ寝ていても平気だぞ」
陽がまだ高いから、ね。
11/24 21:18