◎悼霊花@CP色薄め


アルカヴェ/悼霊花/CP色薄め


 伝う雫。こぼれる液体。雨だ。スメールに雨が降っている。
 ざあ、ざあ。木の葉と雨の当たる音。カーヴェはじいとその場に立つ。傘はない。必要なかった。
 ざあ、ざざあ。カーヴェは涙を流している。雨の中で、あつい涙が頬を伝う。
 もしこの時、あの彼がいたら。きっと無言で、雨風の凌げる所へ連れていくだろう。
 カーヴェは一人だった。

 メラックさえもいない。一人きり。カーヴェはぼんやりと立っている。神の目はある。神は見ておられる。

 ふいに獣が倒れていた。獣の血肉から種が芽吹いた。花が咲いた。
 その鮮血のような花弁を、カーヴェはひとくち、口にした。

 帰宅する。スメールシティは晴れていた。あの彼は、アルハイゼンはじいとカーヴェを見ていた。
「おかえり」
 ただ、それだけ。カーヴェはニコリと笑う。
「ただいま、アルハイゼン」
 カーヴェの弔いを、カーヴェだけが知っている。


11/24 19:54
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