◎かわいいきみ!@概念ショタおね@両片思い


アルカヴェ『かわいいきみ!』/概念ショタおね/両片思い


 朝だ。カーヴェは起きて、簡単に朝の身支度をしてから、朝食を作る。メラックに手伝ってもらいながら作り上げると、アルハイゼンを起こしに向かった。
「アルハイゼン、起きてるか?」
 ノックするも、返事はない。またかと、カーヴェは扉を開く。
 アルハイゼンは眠っていた。休日なので早起きの必要はないが、生活リズムを守った方がいいといつも言うくせにと、カーヴェは肩を揺すった。
「アルハイゼン、朝だぞ。朝ご飯出来てるからな!」
「……うん」
「ほら起きろ。きみの好きな肉もあるぞ」
「カーヴェ、」
 何だよと顔を覗き込めば、アルハイゼンはゆるりと言った。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
 そうしてのそりと起き上がったので、カーヴェは早くしろよとだけ言った。

 朝食の仕上げをして、机に並べる。アルハイゼンは、ぼうっとしながら椅子に座る。相変わらず休日の朝はオフモードだなあと、カーヴェは苦笑する。
「食べようか」
「うん」
 食べながら、今日の予定を決めていく。アルハイゼンは家にいるらしい。カーヴェは家の中で仕事をするつもりだ。
「模型作りで騒ぐなよ」
「残念ながら今日は製図だ。まだ余裕はあるけど」
「早めに取り掛かるといい。きみのことだから、修正を重ねるだろう」
「分かってる! 昼は家で食べるか?」
「そのつもりだ」
「なら僕が作るよ」
「好きにすればいい」
「そうするさ」
 ゆっくりと朝食を終えて、片付ける。アルハイゼンはコーヒーを片手に、読書を始めていた。カーヴェが淹れるコーヒーを、彼は気に入っているらしい。というより、カーヴェが彼の好みに寄せているから、当たり前だ。カーヴェは自分のコーヒーを手に、書斎に向かった。

 カリカリと製図作業をする。ふと気がつくと、書斎にアルハイゼンがいた。何も言わずに、本をいくつか出して、机に向かっている。その姿はいつかの頃のアルハイゼンを思い起こさせて、カーヴェは胸が締め付けられる。
 あの頃とは違う。だから、カーヴェが声をかける必要はない、のに。
「アルハイゼン」
 小さく言う。彼は顔を上げた。
「何だ」
 なんでもないよ。カーヴェは少しだけ泣きたくなった。
 戻らない過去を蒸し返すつもりはない。でも、今日のアルハイゼンは学生時代を思い出させる。まだ若くて、仲が良かった頃。人を寄せ付けないように振る舞う彼と、誰とでも仲良くしようと身を削る自分。カーヴェは苦しいなあと思う。
 今だって、悪いことばかりではない。大人になった。建築デザイナーとして働ける。これでいい。幸せだ。カーヴェは線を引く。まっすぐだ。
「カーヴェ」
「なんだよ」
 振り返ると、アルハイゼンは本を閉じた。
「きみの意見が聞きたい」
 差し出された本に、カーヴェは呆れた。
「僕は仕事中だぞ」
「作業が捗っていないなら休憩すればいい。まだ期限があるのだろう」
「そうだけど。あ、その本は面白そうだな」
「きみなら興味を持つと思った」
 その言葉に、カーヴェは首を傾げた。アルハイゼンは淡々としている。
「俺はきみと討論がしたい」
「……きみってやつは」
 ああもうと、苦笑する。
「たまにすっごく可愛いことするな」
「そんなつもりはない」
 アルハイゼンは気を悪くするどころか、やや嬉しそうにしていたのだった。


10/07 10:32
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