◎どんなに呼んでも届かない


fe覚醒のクロマリ/支援Aぐらい


 この胸に留めておくべき言葉がある。

「クロムさん、お茶でもいたしませんか?」
 書類仕事が煮詰まっているのを察して言えば、頼むと了承してもらえた。そして、ちょうど気分転換がしたかったんだと感謝の言葉を言う姿が、私は大好きだと思うのです。

「クロムさん、こんなところで訓練ですの?」
 ふと、野営している隅で護衛も付けずに訓練している姿を見かけて驚けば、見つかってしまったかと少年のように笑う姿が、大好きだと思うのです。

「クロムさん」
 静かに昼寝していたクロムさんの肩にそっと毛布をかけてさしあげる。その安らかな眠り顔に、大好きだと思うのです。

 クロムさんと呼ぶたびに、好きですと叫んでいる、けれど、本当に大好きだとは言わない。言ってはならない。クロムさんの周りにはもっともっと素敵な女性が沢山いるのだから。
「クロムさん、今日はいつもと違う茶葉が手に入りましたの」
「それは楽しみだな」
 笑ってくださるクロムさんの、穏やかな笑顔に、今日もまた好きだと叫びながら名前を呼ぶのです。



09/05 16:40
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