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 2015.12.06.Sun:23:33

第74回フリーワンライ企画様へ提出作品
使用お題:白雪と銀世界/本音に隠した嘘を見つけて/好き、嫌い、好きの法則/ピアニッシモの本音/美しき悪/ここでクイズです
ジャンル:二次BL
CP:うぐしし
タイトル:痛み
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
鶯丸さんのことがよく分からなくて不安になる獅子王さんの話。付き合ってる。ふんわりした話かもしれません。
黒→嘘/白→夢/足跡→現実


 すきだよ。獅子王が言う。俺も好きだ。鶯丸は応えた。ふふと獅子王は笑う。彼は雪の中を歩いた。
「黒い色は目立つだろ。」
 なあ鶯さん、と獅子王は笑った。雪の中だというのに彼の頬は真っ白だ。金色(こんじき)もまたよく映える。鶯丸はそう応えたが、歩み寄ることはしなかった。
 獅子王はうつくしく微笑む。
「雪の中はまるで夢みたいじゃないか。」
 その言葉に夢見る子どもの響きはなく、ただただ皮肉のみがのせられていた。

 本丸を雪の景色にすると審神者である主が伝えたのは昨日の夜。朝には切り替わっているから各自あたたかくして寝るようにとのお達しだった。鶯丸と獅子王はそれにきちんと従い、冬用の布団をかぶってそれぞれ床についたのだ。そして朝、短刀たちのはしゃぎ声で彼らが目覚めれば外はもう一面の雪景色となっていた。二振りに気がついた短刀たちに挨拶をし、彼ら太刀は寒い朝だといいながら、支度に取り掛かったのだった。

 かくして現在。二振りはそれぞれの仕事を終わらせ、日の光が輝く中で外へと出ていた。彼らの服装は戦装束。それぞれが短い遠征から帰ってきたところだった。
「寒いか。」
 鶯丸が聞けば、ああ寒いなと獅子王は言う。
「とても寒いよ。」
 刃色の目が細められ、その目を縁取る金色の睫毛が日の光できらめく。そうか、鶯丸は返事をした。獅子王は相変わらず白い肌をしている。
 獅子王の戦装束は黒と金をしている。鶯丸の穏やかな色味とは違い、攻撃的とさえ感じる高貴な色を獅子王はひらひらとはためかせる。動くたび、雪に跡をつけるように。
「すきだよ。」
 振り返り、そう言った獅子王は優しい顔をしていた。鶯丸はそれを見て、俺も好きだと応えた。そしてその足を一つ、踏み出した。獅子王は立ち止まり、鶯丸と視線を絡ませたまま。柔らかな笑顔のまま。
 黒い服が白を虫喰むような、空気を漂わせて。

 鶯丸は彼の前に立った。彼の足跡が雪の中、まっすぐについていた。
 獅子王が腕を広げると、ひらひら。洋服がはためき、彼は笑う。
「さあ、ここでクイズを一つ。」
 謎掛けを一つ。
「俺はあなたを好きになる?」
 鶯丸はそこで笑みを深くした。何と言うこともない事だと鶯丸はひとつ笑った。その手を獅子王に伸ばし、彼の肩に乗せる。そのまま肘へと手を滑らせ、手首を強く掴んだ。いたい、獅子王は眉をひそめた。鶯丸は笑う。
「今更だ。」
 鶯丸はそう言って握った手首を引っ張り、倒れてきた獅子王を抱きとめた。抵抗をしなかった獅子王はその腕の中で、ゆっくりと瞼を閉じた。
「夢みたいだ。」
 そう呟いた獅子王の、その体を鶯丸は穏やかに抱きとめていた。手首を掴んだ手は、変わらぬまま。



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