◎こうふくなひと


グラハウ


 幸福になどなりたくなかったと、いつか誰かが言っていた。何を羨ましいことをと思ったけれど、いざ、人に幸福だと思われていることを知ると、その言葉の意味がわかった。しまキングの孫、いつも笑って楽しそう、未来が約束されている。何もかも、おれを見ていなかった。
 そんな時に出会ったのがグラジオだったんだ。
「否定が嬉しかったのか」
「まあ安直に言っちゃうとねー」
 初めて、認められた気がしたんだ。そう言えばグラジオは、おれの背中をぽんぽんと叩いた。おつかれって、大丈夫だって言われた気がして、この人は本当に優しい人だと思った。言葉が少ないことがこんなに嬉しいなんてことも、初めてだと思った。


10/24 23:08
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