◎甘い果実


グラハウ


 グラジオの声が遠い。視界が遠退いていく。意識が、沈んでいく。ああ、倒れる。そう理解して、おれは倒れた。
「栄養不足」
「うっ」
 グラジオがベッドの横に座って、点滴を受けるおれに言った。倒れてすぐに病院に運び込んでくれたグラジオには感謝してもしきれない。
「ここのところ食欲無いって言ってただろう」
「うんーだから、あんまり食べてなくて……」
「食べないと倒れるに決まってるだろう」
「そうだけどさー!」
 だけど食べれないものは食べれないのと言えば、グラジオはそうかと話半分におれへと何かを差し出した。薄い桃色の果実。モモンのみの皮を剥いた一切れだった。
「食べろ。果物でも食べないよりマシだ」
「うーん」
 そのまま無言で差し出され続けて、仕方なく口にする。甘い果汁が口いっぱいに広がった。うん、美味しいけど。
「もうお腹いっぱいー」
「モモンのみ一つ分は食べろ」
 ほら、とまた差し出されて、グラジオったら意地になってるなあとおれは仕方なく口を開けたのだった。


10/17 19:19
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