◎ほんもの


グラハウ


 構わないんだ。そうじゃないといけないんだ。おれはおれでなければならなくて、おれはハウじゃなきゃダメなんだ。
「そうやって縛り付けて、どうしたいんだ」
 がんじがらめにぐるぐるになって、おれはやっとハウになる。それこそが皆の求めるハウであって、何にもないおれなんかハウじゃない。それはただのまっさらな魂だけで、何にもない魂だけなんだ。
「綺麗だろうに」
 綺麗なものを皆はおれに求めていない。おれは綺麗ではなく、明るくなければならない。明るく笑って、たまに毒を吐く。そんなしたたかで明るい子ども、それがハウなんだ。
「お前が何と言おうと、オレはまっさらなお前と共にいたい」
 なにそれ、なにそれ。何にもないおれを求めるだなんて難しいこと言わないでよ、おれはどうやって応えればいいの。なにも喋らなくなればいいの、動かずにいればいいの、笑わなければいいの。
「オレは、心から笑うお前が欲しい」
 なにそれ、なんだそれ。

「グラジオってばかだねー」
「お前の本当が手に入るなら、なんて言われたって構わない」
 そう言って握られた手はやけに温かった。


01/10 00:35
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