◎愛を唄うより愛に沈むより


グラハウ/月夜のデート
タイトルはシングルリアリスト様からお借りしました
!ネタバレ!
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 二人して海に沈んでいたみたいだ。
 暗い夜、けれど、優しいお月さまが照らす夜。そんな密やかな時間にグラジオと会った。
 待ち合わせの場所はリリィタウンの外れ、海が見える丘。暗い海は月の光でキラキラ輝いている。月明かりに照らされたグラジオはいつもより優しく見えて、クスクスと笑ってしまう。グラジオはいつも優しいけれど、見た目は少し気難しそうだから。
 笑っていると、どうしたんだとグラジオが気にするので、なんでも無いよと笑うのを止めた。そして代わりに問いかけるのだ。いったい今日はどうしたの。
「ただ、会いたくなっただけだ」
「えー、ほんとー?」
 何故疑うと不機嫌そうにするから、そういうところだよと笑う。
「少しぴりぴりしてるよー、お疲れさまー」
「……ビッケに聞いたのか」
「ううん。勘かなー」
 お仕事で大変なことがあったんだねと言えば、まあなとグラジオは息を吐いた。色々と立て込んでいたんだと言う。
「本当は昨日会いに来る予定だっただろう」
「うん。でも気にしてないよー」
 オレは気にするとグラジオは悲しそうで、その背中をぽんぽんと撫でてあげる。そして気にしてないと繰り返した。
「そりゃ会えないのかーって残念に思ったけど、怒ったりとかはしてないよー」
「少しくらい怒ってもいいんだが」
「うーん、そうかなー」
 でもとおれは笑った。海風が吹く、潮の香り。月明かりに照らされたグラジオは、やっぱりいつもより優しそうだ。
「グラジオがオレの事がいちばん好きなの、知ってるからねー」
 だから必要以上に怒らないし、不安にだってならないと言えば、グラジオは穏やかに笑った。
「オレもそう信じよう」
「えー、知らなかったのー?」
「お前は本心が分かり難いからな」
 少し疑うくらいが丁度良いなんて意地悪なことを言うから、ひどいと笑いながらグラジオの肩を小突いたのだった。


12/13 17:36
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