◎きみとの未来


グラハウ(グラジオ×ハウ)
※ネタバレを含みます。
あまり本筋のネタバレになるような内容ではないですが、念の為に。気にする方はブラウザバックをお願いします。
※一番下に時間軸について書きました。
ゲームのネタバレになりそうなので大丈夫な方だけスクロールで確認してからお読みください。


 優しい場所で産まれたと思っていた。けれど、彼奴は違った。
 偉大な祖父を持った劣等感なんて無かったみたいに振る舞う。いつも笑顔でいられるバトルが良いと甘ったれた事を言うくせに、その実、バトルがそれだけではないとも気がついているし、ウルトラビーストを巡る一連の事件で彼奴はその事をよく知った。それでも笑って、笑顔のバトルが良いと言う。
 それだけじゃない。彼は、本当は俺たちきょうだいが望むような優しい場所で育ったわけではない。詳しくは知らないが、チャンピオンとなったあいつは言っていた。祖父と暮らしているようなものなのに、祖父は彼奴に甘いのだと。壊れ物を扱うような節があるのだ、と。それは彼奴の幼少期にあった出来事が関係していると言っていたが、彼奴が俺の想像する世界で生きていたわけではないと知っただけで充分に衝撃的だった。

 彼奴の手が動く。突然歩くのを止めて俺の腕を取って、美味しいマサラダの店があるのだと楽しそうに言う。食べることが好き、楽しくありたい、笑顔は大事。その価値観は、どこか痛々しい悲鳴にも聴こえた。
「ハウはしまキングになったらどうするんだ」
 突然の質問に少しの間だけ目を丸くして、笑った。
「きっと忙しいねー」
 でもその忙しさは望んだものなんだよ。言葉の裏の、真意が聞こえてきた気がして、俺はそうかと言って料理を食べ進めた。
 此奴は俺のことを言葉が少ないと言うが、そんなのはお前も同じだと、言いたかった。



※時系列は主人公がチャンピオンになるほんの少し前です


11/22 01:22
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