▼ 妥協案、鳥籠越しの空
Jul 31, 2015(Fri.) 00:18
 くすんでいるわけじゃない。でも、明るいわけじゃない、暗い青空に僕は気がつく。空を見たのは久しぶりだ。否、じっくりと見たのは久しぶりだ。
「何みてんの」
 トウヤが僕の目を覆う。僕とトウヤはだいぶ身長差があるから、そんなことをするのは大変だろうに。
「Nは空を見なくていいよ」
 トウヤの意図が分からず、覆われた目を閉じる。長くはない睫毛がトウヤの手に触った。
「俺の鳥籠越しなら許してあげる」
 そこで僕は潔く彼の意図が分かったのだった。



妥協案、鳥籠越しの空
(どくせんよく)



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