▼ そのひとはかみさまでした※捏造
Jun 5, 2015(Fri.) 08:47
木リコ
!捏造ですご注意ください!


 眩しい笑顔と高い背のその人は私にそっと笑いかけて、伝えた。その時の言葉を私は一生忘れないだろう。忘れたって何の支障もないのに、私は忘れられないのだ。
 季節が巡り、冬の日にその人と歩いた道を私は忘れないだろう。その時に告げられた言葉を私は忘れられないのだから。優しいその人に、そんなことを言わせてしまった自分が、とても惨めだった。
 春に新入部員が入ってきて、檄を飛ばす。だけれどもそれはどうしたって私に返ってくる言葉なのだろう。決意しなければならないのは私なのだ。
 部室の中、その人に告げる。
「ありがとう。あの頃、とても楽しかった。」
 やっと言えた一言は、震えてなかっただろうか。笑顔でいられているだろうか。目の前のその人はいつも通りに優しく朗らかにいてくれているけれど、本当に良かったのだろうか。これは私の独りよがりなけじめで、それは迷惑ではなかったのだろうか。
 肩を優しく叩かれる。
「リコは責任感が強すぎるんだよ。」
 俺なら大丈夫だから、もっと前を向いてほしいと。この人はなんて美しいのだろう。まるで太陽ではなかろうか。
「ありがとう。」
 再度告げた言葉に、目の前のその人は此方こそと返してくれた。



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