さぁ飛び込めラヴァーズ!


じりじりと肌を刺すような日差しが容赦なく照り付ける。あつい。汗が額からじわりと染みる。
そんな太陽に照らされながら、今日も球を追いかける。
右、左、カーブを描いて上に、そしてラインギリギリを狙って下に。視線をさ迷わせて、そして、眼に映るのは、あの人の姿。
小春先輩の隣で、ふわふわ嬉しそうに笑って、汗に濡れた緑の髪を跳ねさせて、

「小春ぅー!」
「なぁにユウくん」
「めっちゃ暑いなぁ!まるで俺らみたいや!な!な!せやろ!」

なーんて、この暑いのに先輩にぎゅうぎゅう抱きついて。
暑苦しい。迷惑や。なんやねん。

「先輩らうるさいっすわ、二酸化炭素増やさんといてくれます?」
「なんやて財前!」
「ほんまやわーユウくん、ユウくんのせいで余計温暖化なったらどないするん?」
「小春までひどいわっ」

なんやねん。二酸化炭素言うたんは俺やのに、結局は小春先輩に話が戻ってる。いい加減にして欲しい。だいたいなんで、俺が、こんなに気ぃとられなあかんねや。練習の邪魔や。

そう思って、また球を追いかける。
日差しが眩しくて、目がくらむ。眉をしかめながらも、黄色の球を追いかける。よし、この調子。そう思うのに、また視界にちらつく緑の髪。ぴょんぴょん跳ねて、きらきらと汗が散る。黄色のユニフォームとのコントラストが綺麗で、何故かつい見とれてしまった。

たんたんたん、

返しきれなかったボールが、脇を跳ね転がる。ああ、もう、また邪魔された。
文句を言おうとして、ユウジ先輩を見やる。

「   」

声がでなかった。
なぜか。彼は真剣にテニスをしていたから。俺の邪魔になるようなことなんて、一切していなかったから。真面目にプレイする先輩の瞳は、おちゃらけてプレイするときみたいに隠されていなくて、綺麗だったから。

練習中、いつもユウジ先輩に邪魔されている気がしてた。だから実は、彼のことは少し苦手だった。だからちょっと冷たい言葉を口にしたりして、先輩からも俺を嫌ってもらおうとした。そしたら、あんまり構ってこなくなるんかなって思ってたから。
でも、ほんとは、
邪魔されてたんやないのかもしれない。
よく先輩に気ぃ散らされる気がしてたのは、本当は、俺が先輩を視線で追っていたから?
無意識で、俺自身が、先輩を探していたから?

そんなわけない。
そう思うのに、頭がくらくらして、あつくて、あつくて、わからない、あつい、

くらくら、する、

頭が痛くて、倒れこむ。
瞼を落とす前に見えたのは、やっぱり彼の緑の髪で。

「財前!なぁ、大丈夫か?しっかりしぃ!熱中症や!」
「あー…うるさいっすわ、…」
「お前なぁ!俺に文句言う前に自己管理くらいしっかりせえ!」
「わかってます…って」
「わかってないからこないなってんねやろ!アホ!」

ぐらぐら煮える頭で、それでもわかることは、ユウジ先輩に全然嫌われてなかったこと。なんや。めっちゃ心配してくれてはる。
せやったら、
逆に、優しく優しぃくしたら、先輩は俺のこと大好きになるんとちゃうかなって、茹だった頭でそんなことを思いついた。
俺が冷たくして、この態度。
なら優しくしたら、もっと心配してくれるんちゃうかなって。
だから、

「先輩…」
「なんや」
「………あー、…」
「なんやねん、水か?水やな?ほら、飲め!」
「ちゃいますって…」
「じゃあなんやねん」
「ユウジ先輩は優しいっすわ…」
「おう!当たり前や!もっと褒めてくれてええねんで!」
「そんで、可愛いっすわ…」
「は?」

あたまいたい、
でも、なんか、ユウジ先輩に心配して欲しくて、どうやったら構ってもらえるんかなって思って。
どないしたら、小春先輩より優先してもらえるんかなって、ぐらぐらする頭で考えて。

「ちょ、財前、おまえ大丈夫か」
「ユウジ先輩…」
「な、おまえ頭痛いからなに言うてるなわかってへんのやろ?大丈夫か?俺は一氏ユウジやでー?聞いてるかー?」
「聞いてますって」
「先輩、好きですわ、」
「へ」

あ。
目ぇぱちくりさせてる先輩めっちゃかわええな。もっとちゃんと見たかった。
そーか、こういうこと言うたら、そんな顔見せてくれるはるんかな。

えと、え、いやでも、おれ小春ひとすじやから、あの、ひとうじだけに、な?
とかわけわからんこと言うてるけど、気にせんと、ごちゃごちゃ言うその唇を塞いでしまう。
あ、やっぱりかわええな。
間近で見るぱちくりした目、めっちゃかわええな。

顔真っ赤にさせて、ななななな、とか言うてる先輩に、

「まぁつまりは、俺と境界線越えてみませんかっちゅー話ですわ」

って、ふらふらする頭で考えた台詞言いながら、まぁ、


水分足りなくて倒れたわけなんやけども。



熱中症になりながら「好き」、なんて、小春先輩に言われたこと流石にないやろ。
他にはどんな「好き」、言われたことないんかな。

いろんな「好き」を伝えたら、いつかは小春先輩より優先してもらえるんやろか。

朦朧とする意識のなか、そんなことを考えた。



さぁ飛び込めラヴァーズ!
(境界線、俺と越えてみませんか)












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