匂いくらり



※直接的な性的描写はありませんが表現に注意して下さい。



「ん…」

優しい日差しが目頭をかすり、眉をひそめ目を覚ます。そんな光を避けるように寝返りをすれば、目の前には愛しい恋人の姿があった。7月の夜の空気は涼しさもありながら、昨夜の恋人との行為に体は熱く、窓を少し開けたままにしていため、そよ風にカーテンが揺らいでいる。時計の針を見ればもう、朝を向かえ9時を回っていた。


「…ユウジ先輩、もう朝なってますよ」
「う、んー…」
「んー…て、もう起きましょ」
「…」

ユウジ先輩はそう一つ返事をし、更に布団に鼻先まで潜り中々目を開けようとしない。再び催促しても、聞こえてくるのは浅い寝息のみ。


(中々起きひん…けど)

ベッドの上に肘を突いて恋人の姿を見つめた。薄手の布団に包まるユウジ先輩が、可愛くて愛おしい。そんな恋人をもう少しだけ見ていたかった。先輩の頭を撫でると、綺麗な髪が吸い付くように俺の指の間を流れる。そんな先輩の髪からは、俺と同じシャンプーの匂いがする。俺の好きな匂いが、恋人からも香ってくる。


(なんやえぇな…こういうの)

昨日、俺とユウジ先輩は一日ずっと一緒に居た。夜には俺の家へと泊まりに来てくれた。一緒に飯を食べ、まあ風呂は別々だったけれど、俺と同じシャンプーを先輩も使って、久しぶりの行為後には同じベッドの上で眠りにつき。なんだか同棲でもしているような、そんなこそばゆい気持ちだった。


「……んー…なんやぁ…もう、朝か?」
「やっと起きましたね。さっきゆうたじゃないですか」
「寝とったし…聞いとらんかったわ」
「ま、えぇですわ。おはようございます」
「おん。はよー…あ、せや」
「?なんですか」

布団に潜り寝ていた先輩が目を覚ます。やはり先程の応答では、まだ本人は夢の中にいたらしい。目を覚ました恋人が、何かを思い出したように俺に言葉を送る。


「誕生日、おめでとうな。光」
「…おおきに、ユウジ先輩」

優しい笑顔に優しい声。そんな先輩からの言葉に、俺の心はいっぱいになった。こんなにも幸せな朝を迎えたのは、産まれて初めてのような気がする。


「ユウジ先輩」
「ん?なんや」
「先輩に欲情したんで、昨日の続きしましょ」
「…へ?……な、なにゆうてんねん!?朝からそないなこと…も、もう起きんで…ってうわっ」
「今日、俺の誕生日なんで」
「そ、そないな関係ないやろ!昨日、祝ったやんか!」
「もういっぺん、祝ってほしいんです」
「…わ、わがままなやっちゃな…勝手に、しいや」
「ユウジ先輩、ほんま愛してます」


そうしてまた、二人唇を体を重ね合わせる。そんな幸せな朝が昼が夜が、いつか当たり前のように、俺たちにやってきてくれますように。今日も俺は、先輩からの愛に溺れながら愛し続ける。お互いの匂いに、包まれながら。










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