「お待た、せ?」
控え室の扉を開けて唖然とした

え、ゾンビ室!?

「あら、さゆ。もう話は終わったの?」
「終わったけど…どんな状況?これ」
「みんな動けなくってね〜
今からジャンケンで負けた人が火神くんをおんぶして近くのお店に入るのよ」
火神くんをおんぶって…
もし仮に黒子くんが負けたら、

「すいません、もうムリです」

なんて考えた数分後
ジャンケンで負けた黒子くんは火神くんを背負い、見事に雨でぬかるんだ地面に落としてしまったのだ


「すいませーん」
リコに続いてお店に入ると、妙に見覚えのある2人を見つけた

「お」
「ん」
「幸ちゃんと黄瀬くん?」
さっき別れたばかりの2人に駆け寄った直後、

「すいません、16人なんですけど」
「ありゃ、お客さん多いねー。ちょっと席足りるかなー」

俊くんと店員さんの会話が聞こえてきた

「もしあれだったら相席でもいっすよ」
おぉ、幸ちゃんが優しい!!
と感心すると無言で睨まれた。
なんで考えてることわかるの!?

「じゃあ、さゆさんはこっちで」
「え?」
黄瀬くんに腕を引かれ、なぜか隣に座らされた

え、なんで黄瀬くんの隣!?

「あっあの黄瀬くん、私…ッ」
俊くんの隣にいきたいんですけどッ

そう言おうと口を開くと、

「すまっせーんおっちゃん、2人空いて…ん?」
またまた見覚えのある2人に出くわした

「高尾くんに緑間くん!?え、なんでここに!?」
「いやー真ちゃんが泣き崩れてる間に先輩たちとはぐれちゃってー。ついでにメシでも、みたいな」
「オイ!店を変えるぞ、高尾」
「あっオイ!」
緑間くんが扉を開けた瞬間、とんでもない豪雨が目に飛び込んできた
…猫飛んでなかった?

「あれっ?もしかして海常の笠松さん!?」
「なんで知ってんだ?」
「月バスで見たんで!!全国でも好PGとして有名人じゃないすかっ」
大興奮してる高尾くんを見ていると、幸ちゃんを違う机に連れて行った

チャンスッ「わっ私も移動する!!黒子くんと緑間くん、どうぞっ」
口早にまくしたて脱兎のごとく俊くんの隣に座る

「さゆ、あんたがあんなに早く動くの初めて見たわ」
呆れ気味に言ったリコに苦笑いを浮かべ、俊くんの手をぎゅっと握る

「さゆ?」
「…怒ってほしかったな」
「え?」
黄瀬くん・黒子くん・緑間くん・火神くんを見ながら楽しそうにしてるみんなを横目に、俊くんの手を握っている手に軽く力を込める

「黄瀬くんが私を隣に座らせたとき、俊くんが何か言ってくれるかも、って期待してたんだ」

ちょっとだけ
本当にちょっとだけ、切なく感じたんだ

「…なんてねっごめんね、単に私のわがま、」
俊くんに唇をふさがれ、言葉は最後まで続かなかった

「俊くん?」
「…本当は言いたかった」
「え、」
「さゆが海常の主将に会いに行くときも
黄瀬がさゆに触れたときも、他の男と仲良くしてるときも。
やめろ、って言いたかった」
初めて聞いた俊くんの本音に、胸がきゅうって締めつけられた

こんなにも思ってくれてたなんて知らなくて
無意識の内に傷つけていたことが心苦しかった

「…一言も話さないなんて、言いきれないけど
俊くんが嫌だって感じるなら私、他の男の子と話すのは必要最低限なことにする」

相当無理なことだとは思う
普通に生活する中で男の子と必要最低限なことしか話さないなんて…でも、

「いいよ、さゆがそう思ってくれてるだけで十分嬉しい」

優しい笑顔にまた胸が締めつけられた

「私が一番好きなのは俊くんだから」

そう言えば、「わかってる」と悪戯に笑ってくれた



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