「はい、これ」
「ありがとう、俊くん」
渡されたボードを見て安堵のため息をつく
…良かった、欠けたりなんかしてない
もし備品を傷つけたりなんかしたらリコに何言われるか…ッ

「あと、さゆ」
「うん?」
「さっき火神に手出そうとしただろ?」
さっきの光景を思い出して冷や汗がダラダラと背中を流れた

いくら怒ってたとはいえ、彼氏の前でなんてことをしようとしたんだ、自分…ッ

「さゆは女子なんだから、手を傷つけんなよ」
「…火神くんの心配は?」
「あいつは丈夫だからいらない」
はっきり言い切った俊くんに笑みがこぼれ、小さく「わかりました」と返した

「第4Q始めます」
審判の声でラストQが始まった

点差は14点

多分、高尾くんには前半以上に黒子くんが見えてるはず…
「見えててくれなきゃ困るんだけどね」
「え?」
「ナーイショ」
リコは不思議そうに首を傾げると、肘で腕をつつかれた
…地味に痛い

「おおっ」
水戸部くんがシュートを決め、点差が12点に縮まる

「げえ!!リスタートが速い!!火神ー…!!」
緑間くんが構えた瞬間、1年生が叫ぶ

さっきの会話がふと頭に浮かんできた

「黒子くんの新しいパス?」
「なんで今まで…」
「捕れる人が限られるんです…けど、今の火神くんなら捕れるかもしれません
でもパスが火神くんだけでは最後までもちません
やはり高尾くんのマークを外して通常のパスも必要です」
「…俊くん、どう?」
チラ、と隣を見て言えば、

「もういけんじゃね?オレの目もつられそうだし」
笑顔でそう言ってくれた

「リコ、もうイケるよ」
「よしっ火神くん!!あと何回跳べる?」
「跳ぶ?」
「緑間を止めたあのスーパージャンプのことか?」
「あれは天性のバネを極限まで使うから消耗がハンパないのよ
加えて火神くんはまだ体ができてない
1試合で使える回数は限られてるわ
本人も気づいてるはずよ、でしょ?」
「そんなん…跳べるぜです、何回でも…」
「今は強がりいらないよ…」
リコはため息をつくと、火神くんの足を視た
「よくて…2回ね」
「2回だけ!?」
「筋力値から推測するとこれが限界ね
もし2回目を跳んだらあとはコートに立ってるだけで精一杯だと思うわ」
2回でどうやって緑間くんを止めるのか…

「1回は勝負所にとっておいて、もう1回は…」

第4Q最初のシュートをひっぱたけ!!

緑間くんの手からボールが離れ、俊くんがシュートを決めた

「10点差ッ!!」
「カントク!いきなり2回のうち1回使っちゃっていいんすか!?」
「ハッタリだからね!」
「ゲ!」
「こっからはフツーにマークしてるだけでやっとだからね。緑間くんに撃たれたら止められない」
「でも、緑間くんはムリなシュートは打たないから、予想を超える火神くんのジャンプが『まだあるかも』と思わせたら少なくともシュートに行く本数を減らせるはず」
「もう今できることは秀徳の得点力を少しでも落としてそれ以上に点をとるしかない!」

だからお願い、黒子くん…ッ

ホーク・アイに完全にミスディレクションが効かないわけじゃない

高尾くんを見ると、黒子くんを見失ったのか、周りを見渡していた

「かかった…ッ!!」
高尾くんの後ろを黒子くんが抜き、

「今度は取られません
今までは来たパスの向きを変えるだけでしたが、
このパスは加速する…!!」

「う、わ…ッ」
ボールを殴ったことで速さが加速し、火神くんの手に当たった瞬間、スゴい音が響いた

「緑間くん!?」
火神くんの前に緑間くんが立ちふさがった

「うぉおおっ」

火神くんは思いっきり跳び、ダンクを決めた

「…今のはダンクじゃなくても良かったんだけど、」
今のでチームに活力を引き出せたよね


「きたッ!!」
4点差まで縮み、会場がさらに盛り上がる

でも、

緑間くんがここで終わるとは思えないんだよね…



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