火神くんにボールが回るたび、どんどん点数が加算されていく。でも、

「そろそろクるかもしんない…」
呟いた直後、緑間くんがボールを宙に放った

火神くんがそれを止めようと足に力を入れたのがわかった
でも、結局跳べないままシュートが決まってしまった

「まさか…もうなの!?」
「え?」
「ガス欠だよ、多分」
「火神くんはおそらくまだ常時あの高さで跳べるほど体ができてないのよ」
「途中交代したとはいえ、2試合目…
津川くんのマークで削られてたしね
それに、ガス欠間近は火神くんだけじゃない…」
一年生が私とリコを見てからコートに目を向けたのがわかった

「うるせーよ!!この程度で負けてたまるか!!」
「火神待て!!」
まだ早い…ッ

そう思ったときには遅く、火神くんは日向くんの言葉を無視してゴールに向かい、緑間くんにブロックされてしまった

「うわぁっカウンター!!」
「いくらなんでもムチャしすぎだよ、アイツッ」
「…よし、決めた」
このQ終わったらとりあえず火神くんを叩こう、うん

「さゆ、手出すの禁止だからね」
「なんでわかった!?」
「わかりやすいのよ」
リコに諭され、がっくしと肩を落とす
…冷静になってくれるはずだもん

ビーッ
「第3Q終了です」
ブザーの音でみんながベンチに戻ってくる

「くそっ」
「火神、熱くなりすぎだ。もっと周り見ろよ」
「そうだ、それにさっきのは行くとこじゃねーだろ!一度戻して…」
「戻してパス回してどうすんだよ」
「あ?」
俊くんと日向くんと火神くんの会話を聞いて、思わずボードを書いていた手を止めて続きを聞いてしまう

「現状、秀徳と渡り合えるのはオレだけだろ
今必要なのはチームプレーじゃねー。オレが点を取ることだ」
…なに、それ?

「なによそれッ!!」
持っていたボードをベンチに叩きつけて火神くんの前に立つ

「それと自己中なのは違うでしょ!?」
みんな必死に考えて秀徳に勝とうとしてるのに、そんな考え…ッ

リコに止められたけど、我慢できなくなって思いっきり手を振りかざす

その瞬間、

ガッ
黒子くんが火神くんの頬を拳に殴りつけた

「黒子、くん?」
「黒子テメェ!!」
「バスケは一人でやるものじゃないでしょう」
「みんなで仲良くがんばりゃ負けてもいいのかよ!?勝たなきゃ何のイミもねぇよ!!」
「一人で勝ってもイミなんかないだろ
『キセキの世代』倒すって言ってたのに、彼らと同じ考えでどうすんだ」

…今の、黒子くん?
いつもと違う口調にみんなが戸惑っているのがわかった

「今の、お互いを信頼できない状態で仮に秀徳を倒せたとしても、きっと誰も嬉しくないです」
「甘っちょろいこと言ってんなよ!そんなん勝てなきゃただのキレイ事だろーが!!」
今度は火神くんが黒子くんを殴り、それを止めに行こうとしたら俊くんに腕を引かれた

「…じゃあ『勝利』ってなんですか。
試合終了した時、どんなに相手より多く点を取っていても、嬉しくなければそれは『勝利』じゃない…!」

帝光にいたときの気持ちなんだろうか

なんとなく、そう感じた
中学の試合でどれだけ勝っても、どれだけ点を取っていても、黒子くんは嬉しくなかった?
「別に負けたいわけじゃないって!
ただ一人できばることはねーってだけだよ」
「つかなんか異論…あるか?」
「そんなん…ねぇ…いや…悪かった
勝った時嬉しい方がいいに決まってるわ」
小金井くんと日向くんにそう返した火神くんの言葉に嬉しくなって頬が緩む

「さ…て、黒子のおかげで火神の頭が冷えたのはいいとしてピンチは変わってねーけど…どうする?」
「すいません、一つ…今なら使えるかもしれません
ボクにできるのはボールをまわすだけです…けど、
もう一段階上があります」



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