「え、今のまま行くの?」
「火神くんはともかく…
高尾くんにはミスディレクションは効かないのよ?大丈夫?」
「大丈夫じゃないです、困りました」
リコの心配を余所に、困った表情を浮かべた黒子くんに思わず苦笑いが漏れた

「できれば第1Q残り3分半
このまま出してもらえないですか」
黒子くんが口を開いた直後、T・Oを知らせるブザーが鳴り響いた

「わかった…任せるわよ!2人とも」
「…あ、」
リコの声に続いてコートに向かおうとした黒子くんのユニフォームを掴むと、黒子くんは驚いた表情で振り返った

「さゆ先輩、止める相手間違ってますよ」
「黒子くんにやってみてほしいことがあるんだけど…」
ちら、と俊くんを見た黒子くんの腕を軽く引けば、真剣な表情で私を見てくれた

「自信、なんてないんだけど…」
そう言って切り出した話を聞き終わると、「やってみます」と言ってコートに入っていった

「さゆ、何を頼んだの?」
「鷹さんを捕まえてもらうの」

そう言った直後、黒子くんのパスが高尾くんによって再び止められた

「黒子くんがムキになってる!?らしくないわ、同じミスなんて…」
隣で困ったように呟いたリコに内心謝りながら試合を見守る

高尾くんはもしかしたらこれで止められる
でも一番の問題は…

スパッ

ボールがゴールをくぐったのを見て思わず眉間に皺を寄せた

センターラインからゴールって…
ハーフコート全てがシュート範囲ってこと?

「あ…ッ」
「あそこまで戻られたら黒子くんのパスで後ろをとれないわね…」
ただのおは朝大好きな人じゃなかったんだ
口から出そうになった言葉を飲み込んでボードを見る

残り3:02

誠凛 8 秀徳14

「ハッ…細けーことなんて知るか!」
火神くんはボールを持ったまま緑間くんと距離を取った

もしかして、さっき言ってた新技?

パッ

一瞬、目を疑った

火神くんが3P!?

「はぁ!?あいつ確かアウトサイドシュートは苦手じゃ…」
「ハッ正直まぁそーだよ!けどカンケーねぇな
そのまま入りゃそれでいーし…外れたら…
自分でブチこむからな!!」

高尾くんの言葉に続いて口を開きながら外れたボールをゴールに叩き込んだ

観客は賑わったが、チームメイトは静かに火神くんに声をかけていた
俊くん、今はダジャレ言ったらダメな場面だよ、絶対…

「2点取られた、それだけだ。オレ達のやることは変わらん。いつも通り攻めるぞ!」
大坪さんのゴールが決まったことで7点差になり、黒子くんが通用しないキツさを実感した

「…リコ、なに?それ」
「あぁ、この前折ったやつ…忘れてたわ」
「折った!?」
リコのポケットから出てきた何かを持ち上げる
…人形の半身?

「去年負けてからね、日向くんに相談されたのよ」
リコの話を聞いて愕然とした

日向くん、いくらプレッシャーかけるためとはいえそれは…

「けど、だから日向くんは、大事なシュートは絶対決めるわ!!」

「王者がなんぼのもんじゃい!死ね!」
「おい日向、本音出てる!」

「そしてちょっとだけ性格がゆがんだわ」
「…ちょっとだけ?」
今は追求しないでおこう

とりあえず、緑間くんが気になって仕方ない
まだ何か隠してると思うんだよね…

「いいシュートなのだよ…
人事を尽くしているのがよくわかった
だが…すまないな」

なに、やってるの…?
そっから何mあると…ッ

緑間くんの手からボールが離れて宙に浮かび、少しの沈黙のあとゴールに収まった

「そんな手前ではないと言ったのだよ。
オレのシュートレンジは、コート全てだ」



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